もくじ
君は、脇がビリビリになったことがあるか?
胸がドキドキする、とか、足がガクガクする、などという言葉を使ったことがある人は多いが
「脇がビリビリになる」
という言葉を使ったことがある人は少ないはずだ。
なぜ突然そんなことを言いだしたかと言うと、つい先日、私の脇がビリビリになったからである。
思い起こせば三か月前
職場で着るために、年末に新しいワイシャツを、金もないのでお手頃な価格が魅力の某大手衣料品チェーンで購入した。
白とグレーを一枚づつ、都合二枚買った。
古いシャツは捨てて、それからは合計三枚のワイシャツを使いまわしておった。
で、洗濯して干すときに、脇の部分が破れておったのである。
しかも両脇。
ワイシャツ三枚を週に五日使いまわすということは、文句なしのヘビーローテーションである。
そりゃあもう、シャツにとっては馬車馬のように働かされていたのだろうが、それにしてもわずか二か月かそこらで脇が破れるか?
もしかして私の脇から繊維を溶かすような液体などが噴出しているのか?
とも疑ったみたが、同時にかったグレーのシャツはちっとも脇にダメージなどない。
元気そのものである。
というか買って三か月なのに、もはや捨てるしかなくなった事がくやしい。
捨ててたまるか!
ので
「脇以外にはダメージもないし」
「素肌に直接着るのではなく、白いTシャツの上に着るのであるから」
「保護色になった脇が破れているなどと」
「職場の者に見破られるはずはない」
「だいたい俺の脇なんて誰がみるかってんだ」
「俺は物は大切にするタイプだぜ」
と持前の貧乏根性丸出しで、破れていることを承知の上で職場に着ていった。
「通気が良いと思えばいいんだ」
と、何食わぬ顔で過ごして居ったが、なんだか職場の者たちの視線を脇に感じる。
巨乳の女性が、男性からの胸への視線を感じることがあるなどと耳にするが、私の場合は脇に感じるのである。
で、脇に意識を集中してみると、意外に私は、腕を上げるポーズをよくとっており、脇が全開状態になることが多いことに気が付く。
『バレているのか?』
と疑いだしたが、
『そこはほら、白いTシャツの上に白いワイシャツを着ているわけだから』
『保護色で破れていることなど、バレる訳がない』
『まあ、〝ほつれてるかな?〟程度は思われているかもしれない』
と思ってその後も過ごしておったが
『一応確認しておこう』
と鏡に向かって腕をあげてみる。
と、この有様である。
バレバレである。
「恥ずかしいわ!」
「しかもなんか花柄みたいになってるし!」
「俺の脇は昔の炊飯器か!」
などと思うが、仕事の途中であり、着替えに帰るわけにもいかん。
『今日は帰るまで、絶対に腕を上げないぞ』
と、トレインスポッティングのレントン状態で過ごすことになった。
ようやく仕事が終わる
で、仕事も終盤にさしかかり、
『どうにかこうにかバレずに済みそうだわ』
と思っておったが、最後の最後で職場の者達全員に、腕で大きく輪をつくり
「今日はもう仕事終了だよ!」
「もうOKだよー」
の意味で、合図をしなければならんことになった。
日本酒の〝白鶴まる〟のCMの矢崎滋のようなポーズをとらねばならん。
※画像は矢崎滋。
この脇で、職場の者達全員に腕で大きく丸などをつくろうものなら、職場の全員に脇がビリビリなのがバレてしまう。
もしも笑っていいとものテレフォンショッキングで
「友達の輪!」
といったタモリの脇がビリビリだったら、いいともの生放送は中断し、特別番組としてプロ野球珍プレー好プレーに差し替えられることになる。
その上、タモリの人格が疑われ、週刊誌では
「お昼の顔の裏にあるタモリの闇」
「品性下劣!干されていいとも!」
などの激烈なタモリバッシングが始まり、タモリ人気も失墜。
ついには芸能界から追放された上、ダンボール生活を余儀なくされたに違いない。
「俺はそんな目に遭う訳にはいかーん!」
「そんなことはできーん!」
と、
『全員にバレるわけにはいかん』
『が』
『一人にバレるのは仕方がないわ』
と思い同僚に
「悪い、実は俺、脇がビリビリでOK出せないから」
「代わりに丸の合図してくれ」
と恥を忍んでお願いすると
「あ、自分で脇がビリビリな意識は有るんですね?」
と言われ、
「とっくにバレてるわ~」
と逃げるように退社してのであった。
つりばんど 岡村
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