【明るい宿無し生活】ルームシェア失敗編

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実家に帰ったものの

 

26歳で実家に戻ったものの、地元の友人はなんだか疲れている感じだし、東京に友人は多いしで未だ東京への未練が捨てがたく。

 

というか、実家暮らしが性に合わなくなっており、若いこともあって親との反りもあわず

 

『とにかく東京へ返り咲きたい』

 

『俺は東京に居なければならない』

 

と勝手に思い込んでいたところ、初夏のある日、当時多重債務に陥っており、借金返済などで親の金を金庫からかすり取っていたことがバレ、親と姉と大喧嘩。

精神的に家に居られなくなった。

 

実家にいると甘えてしまう。

俺は自分で独り立ちしなければならないと思う。

 

無理な上京

 

急いで東京の友人数人に電話し、居候させてくれる者がいないか確認したところ、

 

「借金苦で家賃も遅れ遅れに払っている女がいて」

 

「家賃折半なら期間無制限でルームシェアしてくれるなら助かると言っている」

 

とのことで、何回か顔を合わせたことのある、その4歳年下の不美人の女の六畳のワンルームマンションで部屋を借りる資金ができるまでルームシェアすることとなったのである。

 

親には

 

「東京で就職が決まった」

 

などとウソをつき、紙袋に着替えと洗面道具だけ持って再び東京へ飛び出していった。

 

働き口は、都落ち前に東京で勤めていたバイト先に復帰することになった。

 

早く金を貯めて、部屋を借りようと思いながら、件の女の荻窪のワンルームマンションへ行く。

 

お世話になる旨挨拶すると、家賃を出せという。

 

引っ越し初日であり、手持ちもないので明日に支払うと告げるも、今すぐ出せという。

 

仕方なく、コンビニで金を下ろして支払ったのであるが、こりゃあ、先が思いやられるなと思った。

 

どうやって寝るか?

 

夜、寝るときはどうするかというと、女はベッドに寝る。

私は、床に寝袋を敷いて寝るのであるが、この女の部屋が荷物だらけ。

なんとか横になるスペースは作ったが、その女が持っていた当時流行りの腹筋トレーニングマシーンがあり、それが邪魔で私の体がまっすぐに伸ばせない。

 

 

どうか、このマシーンをベランダに出してくれと頼むも

「雨風で汚れるから嫌だ」

などと抜かす。

だいたい使ってる様子もないし、なんなら毎日、ぞうきんがけをしてもいいと粘るも

 

「だめだね」

 

の一点張り。

泣く泣く、私は、そのマシーンのに体をセットして、自由に寝返りも打てない状況で毎晩、寝ることになったのである。

またその女は極端に寒がりで、夏だというのに冷房をいれようとしない。

扇風機などもない。

 

せめて眠るまでの1~2時間、エアコンを入れてくれるように頼むも

 

「だめだね」

の一点張り。

 

 

 

しかたなく、冷凍庫にあった保冷剤を枕に敷いて寝ようとすると

 

「人のを勝手に使うな」

 

と抜かして使用を許可しようとしない。

 

翌日から私は、コンビニ袋を何重にも重ねたものに水を入れ、それを5~6個冷凍庫で冷やし、眠るときにはそれを体中に押し当てて眠ることになったのである。

 

 

で、二三日もすると、その女が、来月分の家賃を先に払えという。

 

初日に支払ったと告げるも、

 

「家主は自分である」

「いやなら出ていけ」

 

という。

 

いい加減頭に来て、仮にも家賃を折半しており、ただの居候と思ってもらっては困る。

こっちはこっちであらかじめ、この女も助かるとのことでお互い承諾してルームシェアし始めたのだ。

 

そこまで邪険にされる筋合いはない。

 

「おいてめえ、いい加減にしろよ!」

 

と強めに注意し、そこから先はお互いに一言も口を利かない生活に入った。

 

突然のルームシェア解消

 

二か月が経過しようとしたころ

 

「今月末、この部屋の更新なんで、この友達と千葉にマンションを借りてルームシェアすることになった」

 

「だから出ていけ」

 

と抜かす。

 

二か月どころでは、マンションを借りる資金も全く貯まっておらず、出ていくことができない。

 

「お前だけ出ていけ。俺がこのマンションの借主になる」

 

と無茶苦茶なことをいったが、そんな訳にもいかず数日中にこのマンションを出ていくしかなくなった。

 

その女は夜の居酒屋のバイトをしており、いつも帰りが遅いのだが、ある日の夜遅く、いつものように私がアイマスクを付け、耳栓をし、腹筋マシーンに体をはめ、コンビニ袋に入った氷を全身に押し当てて横になって寝ようとしていると、その女が女友達を連れて帰ってきた。

起きて挨拶するのも面倒くさく、そのまま寝たふりをしていると

 

「こいつ、タバコくせえの」

 

「はやく出て行けよ」

 

と言って、狸寝入りをしている私の体にまんべんなくファブリーズを噴射する。

 

ピシピシピシッとファブリーズのしぶきが顔にふりかかる。

怒りに震えながらもガマンして寝たふりを続ける。

ひとしきり私へのファブリーズ噴霧が終わると、そいつは女友達を残してシャワーを浴びにいった。

そこで私は、むっくりと起き、その女友達に挨拶すると

 

「あの子のこと、実はよく知らなくて」

 

「頼まれてルームシェアすることになったけど、大丈夫か心配です。大丈夫でしょうか?」

 

という。

 

「ファブリーズを全身にかけられる、それが、あいつと一緒に暮らしたあとのあなたの姿だよ」

 

と教えてやり、とにかくその日は原チャリで数分のところにあるファミレスへ行き一人で夜を明かしたのである。

この家主の女とはそれ以来会っていないが、風の噂では次のルームシェアにも失敗したとのことである。

(つづく)

 

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つりばんど 岡村

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。 詳細プロフィールはこちら

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