本当は怖い文房具屋

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筆記具の試し書きの紙

 

文房具屋に行くとボールペンコーナーに、インクの出具合を試す紙が貼ってあり各人思い思いに試し書いておる。

前々から思っていたのだが、あの書き込みの数々には様々な人生模様があるのではないか?

 

(あの寄せ書きを見過ごしてはならない!)

 

と思い立った私は、さっそく取材をすべく渋谷ロフト地下1階、文房具売り場へ向かった。 入り口付近で近頃何処にでも出没する”男子が女子の顔を両手で包み込む悪質なカップル”を目撃し (ブッコロス) と思いながら店内に潜入。

早速ボールペンコーナーへ。  

 我々取材班(1人)はあの紙(一説には某国スパイの情報交換に使われていると言われている)をくまなく調査。 詳細なデータを打ち出した。

書き込み内容は以下の流派に分けられる。

 

42%『くるくる派』

 

皆さん御存知の筆記体の「M」の連続を書く一派。

ただただ本当にインクの出具合を試しておるのであろう。

 

26%『五十音派』

 

〝あいうえお〟

〝かきくけこ〟

等と書き連ねる一派。

くるくる派同様、他意は無いと推測される。

残念ながら”さしすせそ”以降は発見できず。

 

14% 『自己顕示欲派』

 

とにかく自分の名前をしるす一派。

彼等には「○○参上!」など所狭しと書き連ねて来た暴走族の遺伝子が組み込まれている事がその後の調査で判明。

 

9%『ラブロマンス派』

 

〝大好き〟

など初恋まっただ中連中や、

〝友梨香、絶対、結婚しよーなー〟

等という、その時点で逆に絶対結婚しないであろう哀しき一派。

6%『願いごと派』

 

〝金持ちになりたい〟

 

〝幸福〟

 

〝健康〟

 

など、そんな事、ここに書いて御利益あるんか!という一派。

 

3%『暗号派』

 

これがスパイの暗号なのか?と思わせる意味不明文の羅列。

〝クスルーサイズ〟

〝y2tSSR〟

〝需要需要需要需要〟

〝巨泉〟

等。

 

実は最後のは、大橋巨泉自らが足を運び名前を試し書いた『自己顕示欲派』との説もある。

 

調査を終えた私は、 (あの寄せ書きを見過ごしてはならない!) と思った事に痛く後悔し、今後一切、 (あの寄せ書きは見過ごす!) と決めたのである。

需要需要需要。

 

  (2005年03月21日11:33公開)

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つりばんど 岡村

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。 詳細プロフィールはこちら

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