【ドキュメント】選挙に出ないのに、街頭演説やってみた!

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一生に一度は、街頭演説がしてみたい!

『言いたいことも言えないこんな世の中じゃ、ポイズン』と、その昔反町隆史さんは歌った。それから二十余年、今、世の中は変わったのか?それとも昔のまま言いたいことが言えない世の中なのか?

誰に頼まれたわけでは無いが、私が身をもって確認してみたいと思う!

どうやって?

街頭演説で!!

街頭演説で人気者になりたい!!

なんでわざわざ街頭演説で確認する必要があるのか?それは私が前々から「人前で大声で言いたいことを言って、目立ちたい!」と、街頭演説に憧れをもっていたからである。

出来ればただ演説するだけでなくワーキャー言われたい!で、演説のあとは聴衆から涙ながらに大喝采されたい!で、出来れば握手攻めに遭いたい!で、出来ればその中の一人の美女から求婚を迫られたい!で、出来ればその美女は資産家の一人娘で会って欲しい!

ああ、考えただけでもワクワクする。ということでやや強引ではあるが、街頭演説をするしかなくなったのである。

街頭演説の準備

さて、街頭演説をするとなったら準備が必要である。私としてはよく見かける政治家が選挙カーの屋根にある特設ステージから行うのをやってみたかったのだが、私にそんなものが調達できるはずもなく、やむなく歩道で演説する、〝辻立ち〟というスタイルで行うことにした。

しかし問題は、道路使用許可である。いったい道路許可申請の費用はいくらぐらいかかるのか?また、申請から許可までの期間はどのくらいか?手続きは面倒なのか?というか果たして許可が下りるのか?

と思って調べてみると、警察署の許可が必要なのは、〝道路の工事、道路に広告板やアーチなどの設置、場所を移動しない屋台の出店、このほか『祭礼行事やロケーションなど一般交通に著しい影響を及ぼす行為』〟であり辻立ちスタイルの街頭演説は許可が不要であるとのこと。

しかしこの、『一般交通に著しく影響を及ぼす』というところがなかなかにグレーゾーンでどうとでも解釈できそうではあるが、私の場合は

「注意されたら謝ってすぐ逃げる」

という弱腰の信念のもと、私の居住地域の新潟市内の人が大勢集まる、新潟駅前の交差点で街頭演説を執り行うことにした。

演説をするのには何が必要だろうか?
普段みかける街頭演説の方々をイメージしてみると

  • メガホン
  • 白手袋
  • 名前が書かれたタスキ
  • 名前やスローガンなどが書かれたノボリ

 

と、少なくともこれだけあればなんとか恰好は付きそうである。

メガホンは小型だが、職場にあったのでそれを拝借することに。

※もっと大きいのが用意できればよかった。この記事を参考に街宣をする方は、ぜひメガホンはケチらずに大きなものを選びましょう。

白手袋は100均でドライバーズグローブというものを購入。

タスキはこれまた100均であきらかにパーティーグッズなものを購入。

※タスキに名前を書くと、万が一お巡りさんに追いかけられて逃げる場合に素性がバレる恐れがあるため、〝本人〟とだけ書いてごまかすことに。

ノボリは、100均で売っていた園芸用の棒と、近所の布地屋さんで白い布を購入し、演説当日に手書きでマジックで何か書こうと決めた。

※これもケチって失敗しました。本気で街頭演説を行う方はホームセンターでノボリのポールが1,000円程度で販売されていますし、オリジナルのノボリも専門の業者に発注すれば3,000円~作れるそうですので参考にしてください。

さて、ひとまず道具は揃った。あとは演説を実行するだけである。が、演説する前の晩に

「いよいよ明日は朝から街宣かー」

「緊張してなかなか眠れないなあ」

と思っていたところ、肝心の街頭演説で何を話すのか全く決めていなかったことに気が付き大慌てで世間に対して言いたいことを考えることになった。

目的と手段が入れ替わるとはこのことである。

街頭演説で話す内容

 

何か言えって言ったって、別に世間に対して言いたいことなど特にない。冒頭で反町隆史さんの曲を持ち出して当記事の企画意図めいたことを書いたが、正直に言えば、ただ街頭演説がしたかっただけなんである。

とはいえ演説で何も話さない訳にはいかないので、とりあえず思いつくままに何か書き出そう。

  1. カレーライスのカレーの汁のことをルーという人がいるが、あれはルーではなく、あくまでカレーソースであるということ。
  2. 寄せ書きは書く方ももらう方も迷惑であること。
  3. タフマンのロゴマークは、ハッキリ言ってアレであること。
  4. タレントの桑野信義のことをクワマンとは誰も呼んでないし、当の桑野さえも自分がクワマンであるという自覚がないと思われるということ。
  5. 金八先生の最終回のラストで金八の主題歌をクラス全員で突然合唱するシーンは、視聴者に対して違和感しか生まないということ。

 

まあ、これくらいあれば十分だろう。

さて、準備は整った。いよいよ明日は朝から生まれて初めての街宣だ!

街頭演説当日

※午前8時30分。演説決行の場所、新潟駅前に到着。

土曜の早朝ということもあり、人影はまばらである。が、この後ここで初めての街宣を行うと思うと、いやが上にもテンションが上がる。ああ、早く聴衆の大喝采を浴びたい!

※自分がこれから演説する交差点付近の歩道を見ながら武者震い、というか緊張で普通に震えました。

 

※この坊主頭が筆者です。演説現場付近の路上でノボリに文字を書き込むが、マジックの出が悪く上手く書けず。当初〝私がやります!!〟と書く予定だったが、〝私〟まで書いたところで、画数が多く、とても全部は書ききれないと判断し、急遽

 

※〝私です〟と書いたたため、全く意味不明のノボリが出来上がってしまった。

※ノボリが出来上がったところで、白手袋に手を通す筆者。白手袋をするとグッと本気度が増すことがわかった。この場合の本気度とは、ヤバ度と言い換えても問題ありません。

衣装を身につけ現場へ向かうが、自分の勝手な思い付きで早朝の平和な街をザワつかせるかと思うと罪悪感をおぼえ、急に知らないおじさんに怒鳴りつけられそうな気がしてドキドキする。

※どうみてもイデオロギーに偏りのある人物に見える。

※午前9時、予定していた演説場所に到着し、さっそくマイクで演説を始める筆者。凶悪な風貌である。

さて、いよいよ演説開始である。人々は私の目の前にさしかかると、私と目を合わせないようにし小走りに駆け抜けていく。こっちも演説なので何か話そうと思うが、緊張して上ずってしまって「えー」とか「あー」ぐらいしか声が出ない。

改めて写真を見て思ったのだが「選挙に金など要りません!」「その証拠にこの私のノボリを見てください!」と言った方が説得力があったかもしれない。

 

 

※ハードコアな泡沫候補にしか見えない。

このまま唸っているだけではますます怪しい。「早く何か話さないと!」と、勇気を振り絞って、「カレーのソースのことをルーという人がいますが、あれはルーではなく、あくまでカレーソースです。ルーというのはコレのことです」と、バーモントカレーを片手に話しはじめられた。

もうこれで大丈夫だ。私は言いたいことを声を大にして街中に対して語りはじめることが出来た。このまま話し続けよう。

あとは聴衆が集まり、うんうんと頷き、涙交じりの大喝采のうえ、握手攻めに遭えばいいのだ。

芸能人で握手を断るひとがいると聞くが、私の場合はそんなことは絶対にしない。それどころか、24時間テレビのマラソンで萩本欽一さんなど「ギャラリーの声援には必ず手を振って応える」「それが人気商売の心意気だ」と豪語するタイプのランナーがいるが、私もまったく同感である。握手は拒まぬ!

さあ、どんどん集まれ!人間ども集まれー!!!

※遠巻きにみるとこんな感じです。

しかし、聴衆は立ち止まって耳を傾けようとはぜず、相変わらず私の前だけ急に足早になり逃げるように通り過ぎていくばかり。喝采どころか、街でひとりぼっち。というか地球でひとりぼっちという気がしてくる。

※ご当地出身の政治家、田中角栄氏のモノマネで「まーそのー!」と人差し指を立てて演説してみるが・・・

何とか人々の気を引いて立ち止まってもらおうと「まーそのー!」と、ここ新潟県出身の政治家、田中角栄のモノマネを挟んでみるものの、誰も立ち止まらないどころか、そもそもモノマネが似てない上、今時そんなモノマネ誰も知らないのでなんの効果もないんである。

その後、十数分演説を続けてみたが、誰一人聞く耳を持たず、『この迷惑オヤジ!』『クソして寝ろ!』とでも言いたげな冷ややかな気持ちがタップリこもった視線を十二分に浴び、心がバキバキに折れ、予定よりも早く演説を打ち切ることにしたのである。

※午前9時20分頃、街全体から嫌われている気がして、頭を下げて演説を終了しました。

結果、

「ああ、俺は街の嫌われ者だ」

「社会のダニだ」

ということがわかっただけで、資産家の一人娘どころか、猫の子一匹近寄ってこなかった。

 

不甲斐ない結果に終わったことを報告に行こう!

演説のあと、私は、駅に入り、電車に乗り込んだ。

なぜなら、私は今回の街頭演説の結果を、ある人に報告しなければならないからである。

誰に報告が必要なのか?

それはもちろん(故)田中角栄である。

他県の方はご存知ないだろうが、新潟では田中角栄のモノマネをした場合、結果を田中角栄自身に報告しなければならないというローカルルールがあるのである。

ということで、私は新潟から電車で片道二時間、田中角栄の銅像がある「浦佐」という駅へ電車で向かった。

 

電車に揺られること二時間、浦佐駅に到着。

「ここが浦佐か」

「待っててください、角栄先生ー!!!」

浦佐駅の八海山口(東口)を出ると、そこには

光り輝く!!!!

 

田中角栄先生像!!!!!!

 

文字通り、足元にも及ばない私を見下ろす田中角栄先生像。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

今回、街頭演説をやってみた結果、言いたいことも言えないこんな世の中ではなく、言いたいこともないのに演説をしても、誰にも共感を得られない、いたって普通の世の中だということが分かりました。

機会があれば反町隆史さんにもこのことを教えてあげたい。迷惑だとは思うが。

追伸

田中角栄のモノマネをした場合に報告が必要というローカルルールは、お察しの通りウソである。

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つりばんど 岡村

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。 詳細プロフィールはこちら

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