〇〇区区民生活部納税課
自分が蒔いた種とは言え、我が銀行口座を凍結しやがったのは三年半前に引き払った東京の某区によるものであったと判明した。
ググった知識でもって、一円でも多く返してもらわなければならぬ。
まず、住民税滞納の時効は五年である。
で、私は以下の二点を武器にして、〇〇区区民生活部納税課に電話をして交渉することにした。
まず一点目は、私は三年半前から既にその土地にはおらず、三年前分からは支払いする謂れはないということ。
そして二点目は、三年前からは母親に毎月3万円のし送りをしており、私からの送金がなくなれば私だけでなく、母親も生活が立ち行かなくなる可能性が有るということ。
さあ、これを言葉巧みに泣き落としでもって交渉にあたれば、12万円どころか一旦口座の残金をすべて使えるように口座凍結を解除してくれるかもしれない。
と、深呼吸をして〇〇区区民生活部納税課に電話し、名前、住所を告げると私の担当者と名乗る女性に引き継がれた。
なるべく腹が減って腹が減ってたまらん、しかしながらそんなことには文句は言いません、あっしが悪いんでげす、と、実際はド二日酔いで食欲どころではなかったが、表面上はそういう悲壮感タップリの声をつくって
「あのう、なんとかしてもらえませんでしょうか?」
と言うと
「どうしてここまで放置しておったのか?」
と言う。
「三年半前に東京を引き払いまして、それからは青森やら札幌やらに長期の出張をしておりまして」
「あくまで出張だというんで、郵便局に転送届もださずで、住所も移してなかったんで気が付きませんでした」
〝おでーかんさま〟
〝なんとかしてくだせえ〟
という感じで答え、心証を悪くしないように言葉に注意しながら
「その口座以外に口座もないし、貯えもないし」
「このままでは生活が立ち行きません」
「必ずお支払いしますから、なんとか一旦口座の凍結を解除してください」
と、ググった結果でてきたキラーワードをかますと、しばし保留にされたのち
「それでは、一旦12万円だけ口座に残して口座の凍結を解除します」
「それ以上の残高は滞納分に充てます」
「それでも足りない分は毎月分割で支払うことにしましょう」
と言う。
ここを先途と
数分後には口座凍結は解除されるとのこと。
で、詳しく聞けば、滞納分は時効が過ぎていない2008年から2013年までキッチリ5年分だという。
『来た!』
と思う。
『ここでもう一押しだ!』
と思い
「でも、私は三年半前から既にそこに住んでいないので、東京を離れた2010年の末までしか支払う必要はないのではないでしょうか?」
と言うと
「だったら、2010年の末からどこか別の市町村に住民税を収めていたのですか?」
「だとすれば話もできますけど?」
という。
勿論、住民税など収めていなかったので、
「しかし毎月母親に仕送りをしておりまして」
と言うが、
「それはこっちは関係ないんで」
と言われ、ぐうの音もでなくなり、担当者と協議の上、毎月2万円づつ分納で、延滞利息は14.6%で、三年以上かけて、都合90万円也を支払うことになったのである。
最後に例え12万円だとしても一旦返してもらえることにお礼を言って電話を切り、この時、私は心の底から
「名実ともに、いよいよ年貢の納め時だな」
と思ったのである。
(つづく)
つりばんど 岡村
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