もくじ
中三の春
中学三年になったばかりの春に、同級生のMと言う男が
「受験勉強を控えてこんなもの読んでる場合じゃない」
と思い立ったとかで、大量に収集してしまったエロ本の処分に困り、河原に捨てに行ったという。
「俺、河原にエロ本とか一杯落ちてるけど」
「いったいどんなヤツが捨ててるんだろう?どんな変態なんだろう?って思ってたけど」
「俺のような奴が捨ててるんだってことがわかった。」
と言っていて大いに納得したことがある。
この様に昔は河原や雑木林なんかに如何わしいブツが廃棄されておったものである。
こって牛が入手したビデオ
同じく中学三年の春、同じバスケ部に所属する〝こって牛〟というニックネームの九九のできない愛すべきバカキャラのヤツが、如何わしいビデオをどっかで拾ったんだか貰ったんだかして入手したと言う。
それを聞いた男子バスケ部三年一同(8人くらい)で
「一大事だ!」
「千載一遇のチャンス!」
などとバカ丸出しでほざき、その日、さっそくバスケのスキルではなく人の好さだけでキャプテンに選ばれたヤツの家に集まって鑑賞会を開くことになった。
ビデオにはいかにもなタイトルの、いかにもなフォントのラベルが貼られており、いやがうえにも我々の気分が上がる。
キャプテン家の居間で、電気もつけずにカーテンを締める。
キャプテン家の親兄弟が帰ってきても隠蔽する時間を稼げるように玄関はじめ家の入り口全部に鍵をかける。
再生しよう!
今はなきビデオデッキにこて牛の持ってきたVHSのビデオを挿入し、再生する。
我々一同で、固唾をのんで、これまた今はなき、ブラウン管を見つめる。
再生されるまでの真っ暗なブラウン管には我々が反射して映りこんでおり、照れくさい思い。
で、いよいよ作品が開始されたが、その主演女優がなんとかいうか、もうオバサンなんである。
冝保愛子のような女優なのである。
冝保愛子が、セーラー服を着ており、助演男優が脱がし始める。
その助演男優の方も、真っ赤な靴下に白いブリーフを履いたオジサンであり、気持ちが悪い。
しかし中学生のリビドーは、計り知れぬものがあり、60分程度のその作品を文句を言い言い一応最後まで全員で観たのである。
おぞましい。
上映終了後、
「いや、酷かったね」
と言い合い、もうコリゴリと思って、それぞれが帰宅の準備に入る。
如何わしいVHSのビデオを手に
「これどーするんだよう!」
などと半泣きですがり付いてくるキャプテンを全員で無視してブツをキャプテンの家に放置して現地解散したのである。
翌日の部活前
前翌日の放課後、部活の開始のとき体育館の前で、キャプテンが相変わらずの半泣きの表情で、女子バスケ部も近くにいると言うのにかかわらず
「お前らこれどーすんだよう!」
と補助バックから例のビデオを出して持ち上げる。
「バカヤロウ、そんなものを学校に持ってくるんじゃねえ!」
「しかもここで出すんじゃねえ!」
と全員でキャプテンを押さえつけ、その場にいなかったバスケ部一気が弱い、〝チリ〟というニックネームの強烈な天然パーマのヤツの補助バックにそのブツを押し込んで
「これでいいね?」
と、チリ以外全員が納得したところで、そんなことは露ほども知らず、戻ってきたチリを含めた全員で練習を開始したのである。
練習後
練習後、こって牛が
「あ!俺のバックにビデオが入ってる!」
と言い出した。
どうやらチリが自分のバックに入っていたブツを発見し、いつの間にかこって牛のバックに入れた模様。
「というかもともとテメエんだろ」
「お前が持って帰れ!」
と言って、こって牛にビデオを押し付け、いつものようにだべりながら、みんなであちこち寄り道をして帰宅したのである。
私の家で
で、家で補助バックからジャージを出そうとすると、なんと私のバックにブツが入っている。
「まったくいつの間に!」
「こって牛の野郎!」
と自分で顔が真っ赤になるのがわかるくらい怒り心頭に発し
「ただじゃ済まさん!」
と、自転車に乗って2キロ離れたこて牛の家に行き、こって牛の家の玄関直結の郵便受けにそのビデオを放り込んで帰って来たのであった。
あとで聞いたところによると、その日のこって牛は、家族中から変態をみる眼差しで見られつづけ、食事も喉を通らず、針のムシロであったという。
つりばんど 岡村
最新記事 by つりばんど 岡村 (全て見る)
- 保護中: テスト104 - 2023年10月21日
- 舞いあがれ!片づけいらずの紙ふぶき - 2021年2月26日
- コサックダンスが踊れるマシーン! - 2021年1月3日
最近のコメント