【急に残高0!】住民税による口座差し押さえ体験記②

Pocket

頭の中が真っ白になる

数分間、キャッシュコーナーの前をあてもなくグルグルと歩き回る。
頭の中は真っ白である。
こういう時、人間は希望にすがりたくなるもので

「もしかして会計の都合で給料日が祝日明けである明日、9月の17日に後ろ倒しになったのか?」

「そうならそうと会社もちゃんとお知らせしてくれよー」

「まったくモウ」

と念のために会社に電話をする。

呼び出し音を聞きながら

『ちゃんと事前に教えてくれないと困るって怒ってやるからな』

と思っていると会社の知り合いの中年男性が電話に出た。

「あのー、今月の給料って、祝日明けに振り込まれるんですよね?」

と言うと

「はあ?もう振り込まれたでしょ」

と答える。

何をたわけたことを抜かしやがんだ、このバカ野郎、ちゃんと確認しやがれと思い

「いや、こっちは確認したところ、まだ振り込まれてないんでね」

と言うと

「俺は金曜に振り込まれてたよ」

とあくまで言い張る。

「いや、でも」

と言いかけると

「ちょっと待って」

と言って保留にされた。

しばらく待つと保留が解除され

「他の人にも聞いてみたけど、やっぱりみんな振り込まれてるって」

と言う。

意味が分からん。

俺だけ会社に嫌がらせされているのか?

大人の社会にもいじめは有るというのは本当だったのだな、と一瞬思うがそんなはずはなく

「まあ、わかりました」

と言って電話を切る。

何かが起こっている。

 

銀行側の都合か?

だいたい、残高がキッチリ0円というのが理解出来ない。

いくら給料日前だからって、数百円は残っているはずである。

キャッシュカードで引き出している以上、きっちり0円になるように引き出せるわけがない。

「ああそうか、キャッシュカードかATMの故障だ!」

「何か銀行側の都合だ」

「ほら、祝日で使えないとか、なんだよ人を驚かすんじゃねえよ」

「心臓に悪いわ」

と再びキャッシュコーナーに入り、確認をとるため備え付けのインターフォンを持ち上げる。

 

呼び出し音が鳴ったあと、担当の女性オペレーターが出た。

「あの~、残高が0円になってるんですが、何かの故障ですよね?」

と尋ねると、私のカード番号や個人情報を聞かれたので素直に答える。

「少々お待ちください」

と言われて、保留音が流れる。

のんきな曲が流れつづける。

すると、曲が終わる。

で、また初めからのんきな曲が流れる。

「結構待たされるな」

「でもぜんぜん構わん。もっとどんどん調べてくれ」

「機械の故障なんて滅多にないんだろうから焦ってるだろうな」

「さて、サウナに入って、夜は寿司か焼肉か、どっちにすべきか」

などと思っていたら保留が解除され、さきほどの女性オペレーターで出る。

「大変お待たせいたしました」

はは、いいってことよ、と思いながら

「はい」

と答えると

「現在、岡村様の口座からはお引き落としが出来なくなっております」

と言う。

『はいはいはいはい、それはもう、それはもう、十分すぎるほどわかっておりますが』

と思い、

「そうです。で、原因は?」

と答えると

「ですから現在、岡村様の口座からはお引き落としが出来なくなっております」

「ですからって、ですからそれはわかっているんですが、原因がわからなくて」

と、ですからをですからで返すが、あくまで女性オペレーターは

「現在、岡村様の口座からはお引き落としが出来なくなっております」

と言う。

『言いたいことはそれだけ』

『あとは電話を切るだけ』

とでもいいたそうな口調である。

と、電話を切られちゃたまらんので、ストレートに

「原因はなんですか?」

と尋ねると

「お答えしかねます」

と言う。

お答えしかねるということは、お答えをしっているが、し兼ねると言うことである。

し兼ねると言っている物をたずねたところで教えてはくれないルールなんだろうから原因を聞くのは諦めるとして

「じゃあ、私の場合がどうこうじゃなくて、一般的にこういうケースではどういうことが考えられますか?」

と聞くと、

「一般的にもお答えしかねます」

と言う。

「じゃあ、こういう時、どこに相談すればいいんですかね?」

と聞くと

「本日は祝日なので窓口がやっておりませんが、明日9:00から17:00に改めてキャッシュカードに記載されている電話番号にお問い合わせください」

と言う。

はじめから、そういえばいいのに、まったく、と思ってインターフォンを置いた。

しつこいようだが、この時、私の財布の中身は130円である。

(つづく)

Pocket

The following two tabs change content below.

つりばんど 岡村

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。 詳細プロフィールはこちら

最新記事 by つりばんど 岡村 (全て見る)

フォローしていただけるとブログ更新を見逃しません