朝の上越新幹線
何年か前の日の朝、用事で出かけた東京から新潟へ来るために東京駅から新幹線に乗ったのだが、自分の指定席は進行方向に向かって最前列で、足を延ばして座れるなと、楽しみにしていたら、その席に明らかに反社会的勢力と思われるお方がお三方で座っておられる。
自由席の切符で指定席車両に乗ってきたと思われる。
社内はガラガラだったので別の席に座ろうとしたが、このあと乗ってくる人とバッティングしたら私が注意されかねない。
まあ、一応、お相手の方たちの機嫌を損なわぬように
「あれ?」
という顔をさりげなくしながら、
「この辺になんか落とし物なかったですかね?」
という動きで
「あっしが悪いのは百も承知なんですが」
「あっしごときがすいやせん」
といった自分を卑下する風情でこっそりウロつくと、一番の兄貴風のお方が
「あれ?ここお兄さんの席か?」
とお気づきになられたので、
「いや、あれ?そう?そうかな?」
「なんかそうみたいです。すいやせん」
などとしどろもどろになりながら答えると
「いやいや、ごめんごめん!」
「おら、お前ら移動しねえか!」
と、後ろに一列ずれて私の背後に座る形となった。
リクライニングなど倒せるはずもない。
座席をお倒しになられる際は…
(針のむしろとはこういうことを言うんだろうな)
と思いながら、楽しみに買ってきた駅弁も取り出しにくく
(困ったなー)
と縮みあがっていたら大宮についた。
お三方が大宮で降りてくれないかと願う。
「今日は晴れ舞台だからな」
「ガハハハッ」
という会話が聞こえてくる。
仮に、お三方が降りられなくても、大宮を出れば新潟まで直通となるので、大宮を出たら、また、さり気ない感じで荷物をもって別の車両に座らせてもらおうと決めた。
まもなく新幹線は大宮を離れ、一路新潟へ。
しかし、急に荷物を持ってたちあがるのもお相手の機嫌を損ねる可能性が高い。
(一番のタイミングを見つけねばならん)
(さりげない演技をしなければならん)
と思っているところへ車掌さん登場し、
「切符を拝見いたします」
と言う。
あれあれ、この後、どうなっちゃうの?
車掌さんは適当に座っているこのお兄いさんたちをどう対処するの???
と半ば怖いもの見たさもあり、切符のチェックの行方を見守ることにしたのである。
(つづく)
つりばんど 岡村
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