初めての観劇
15年ほど前、知人の出演する劇団の芝居を観に誘われ、行くことにしたのだが、お芝居などは「ワルのポケット」とか「うりどろぼう」だとかいう子供向けのを小学校の観劇会で観た以来であり
「芝居っていうのはあれだろう?」
「歌舞伎とかみたいなのでしょう?」
と思って、
「ビールのみながら、弁当つつきながらみるべ」
と、途中のコンビニで弁当、ゆでたまご、ビール(500ml×2)を買い込み劇場へ着いた。
劇場は小ぶりな貸しホールに、十字型のステージが組まれ、その十字の空いたスペースに観客が座るというもの。
さすがに私も、
「これは、歌舞伎と違うべ」
「弁当食える雰囲気ではないべ」
と弁当を断念。
とりあえず、十字型ステージなため、変則的な客席であり、
「すいません」
「すいません」
と五六人に頭を下げ、少し膝を曲げてもらって廊下に出、そそくさとお手洗いにいき、個室に入ってビール500ml缶×1を一気飲み。
ゆでたまごを貪り食った。
我ながらおぞましい。
残りの一本がどうしても飲みたい
自席に戻って開演をまっていたが、少し酔いが回ってきて、残りのビールがどうしても飲みたいが、再びお手洗いに行くにはまた、すいません、すいません式で行くのも億劫で
「この席で飲んじまえばいいっぺ」
「劇が始まる前に飲んじまえばいいっぺ」
と思ったが、十字型のステージなので、15メートル先にも向かい合うようにして観客がおり
「飲んでるとこ見られるの恥ずかしいべ」
「アル中と思われるべ」
となる。
(っていうか、なんでこんな変なステージなんだよ!)
と多少腹が立ったが、仕方なくジャンバーの下で
〝プシッ〟
とプルトップをはがし、逮捕された犯罪者のようにジャンバーで顔を隠し、
〝グビビビビ〟
と残りのビールを一気飲みしたのであった。
芝居が終わり、立ち上がると、向かいの観客席からすたたたっと駆けつけてきたのは知人の女性。
「あんたが上着に隠れてビールのんでるの、私の友達もみんな見てて爆笑してたのに気が付かないの!?」
「まったく恥ずかしい!」
といった具合に叱られてしまった。
私はこのとき、自分では隠れてるつもりでも結構みられてることが多いということと、劇団の芝居は歌舞伎や相撲とは違って、飲み食いしながらみるものでは無いということを知ることとなった。
みなさん、くれぐれもご注意を。
つりばんど 岡村
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