【エレベーターのイライラ】 通勤ラッシュのエレベーター風景

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順番抜かしのオッサン

 

いけないことだとはわかっているが、急いでいる時に、混雑しているエレベーター周りでイライラしてしまう。

 

出勤時など、混雑しているエレベーターに乗るためには、行列の最後尾に並ぶのだが、そこへ私より後から来たオッサンが、行列の前方にいる知り合いを見つけて

 

「お!ういっ~すっぅ~」

 

などとオッサン特有の、息の漏れたような挨拶をして、その知り合いの後ろに並ぶ。

 

『いや、それ順番抜かしだからな』

 

『いいかげんにしろてめえ』

 

などと、朝一番からイライラすることになる。

 

カンダタな人

 

エレベーターの昇降は進み、行列も短くなっていき

 

『次の号で乗れるかな』

 

と思っているが、いざ次のが来てみると私の数人前で定員ギリギリな感じである。

 

『次のを待とう』

 

と思っていると、私の前の数人が、もうギュウギュウだというのにもかかわらず、押し合いへし合いで、我勝ちに

 

「オラ!もっと詰めれば乗れんだろ!」

 

と言わんばかり自らの体をエレベーター内にねじ込んでいく。

ジャントルマンのかけらもなく、マナーもへったくれもない、こういうヤツはだいたいクチャラーである。

 

そのクチャラーがギリギリでエレベーターに乗り込み、ドア側に向き直って

 

『ほら、乗れたじゃねえか』

 

『生き馬の目を抜くサラリーマン業界では、このくらい図々しくないと生きていけないんだよ!』

 

『・・・・・・』

 

『でもちょっと、強引すぎたかな・・・』

 

と、ほんの少しだけ反省している顔に向け、私は思い切り冷ややかな表情をつくり、死んだ魚の目をして

 

『・・・アナタ・・・デリカシー・・ナインダネ・・・』

 

という念を思い切り送ってやるのである。

 

 

目的階数別の心理状態

 

ようやく私が乗ることのできる次のエレベーターがやってる頃には、私の後ろにも、かなりの行列が出来ている。

エレベーターが来たので先頭である私が最初に乗り込むと、必然的に操作パネルの前に行き

〝開〟

のボタンを押し、私の降りる階のボタンを押し、あとから乗る人が乗り切るまで待つ。

 

次々に乗り込んでくるヤツが、各々の降りる階のボタンを押しながら入ってくる。

 

で、二階とか三階とか低層階の場合には

 

『たかだか二階でエレベーターねえ?』

 

『体を動かせ体を!』

 

などと思う。

で、自分より上の階数のヤツだと

 

『なんか、あっしごときがすいやせん』

 

と、なぜか負けた気がして卑屈になるのである。

 

 

低層階でエレベーターを使うヤツの罪と罰

 

この号の乗組員全員が乗り込んだのを確認して

 

〝閉〟

 

ボタンを押して、いよいよエレベーターが上昇していく。

二階に着いて、エレベーターの奥にいる二階で降りるヤツが出ていこうとするのだが、混んでいてなかなか出られない。

 

『低層階で降りるヤツは前の方に陣取っとけばいいんだよ、この間抜けめ』

 

と思うが、前方に並んでいるヤツラもヤツラでマナーが悪く

 

『なるべくなら、このエレベーターに入ったまま目的階に行きたい』

 

『万が一、いったん降りて、乗り遅れたらどーする!』

 

の我勝ちのカンダタ根性を丸出しにして、少し体を傾ける程度であるため、二階で降りるヤツがなかなか降りられない。

 

『全員が乗り切るまで〝開〟ボタンをちゃんと押しとくから、一旦降りろ!』

 

と叫びたくなるのを我慢して、二階のヤツが

 

「スイマセン、スイマセン」

 

を連呼して降りていくのを見ながら

 

『日本人が一生で一番多く発する言葉が〝スイマセン〟というのは間違いなさそうだなあ』

 

と可哀想になったかと思うと、

 

『だから二階ごときでエレベーター使うなって言ってんだよ!』

 

と急にどやしつけたくもなり、なかなかに私の情緒も不安定になってくるのである。

 

ドジなヤツ

 

再びエレベーターは上昇し、次の停止階で停まる。

 

〝開〟

 

ボタンを押して待つが、誰も降りようとしない。

しばらく待つが反応がない。

おかしいなと思ったあたりで、小さな声で

 

「あ、すいません」

 

「押し間違えました」

 

と声がする。

誰も降りないこの階のボタンを誤って押した者がいたのである。

 

『この迷惑野郎!』

 

と乗組員全員が思い、そいつが降りるまで、全員から

 

『・・この人、ドジ・・・』

 

と思われ続けるのである。

 

操作パネル係の葛藤

 

ようやく私の目的階に着き安心したのも束の間、私と同じ階のヤツが

 

〝開〟

 

ボタンを押している私を尻目に一礼などしてドンドン降りていく。

エレベーターのマナーとして、何も間違ってはいないのだが、

 

『なんでこの乗組員の中で一番最初から並んで待っていた俺が最後まで損をするんだ』

 

の気持がつのる。

 

「最初に乗るヤツが操作パネルを操作する必要があるからしょうがねーだろ!」

 

と言われれば、まったくその通りなのだが、言い返しようもないのであるが、でも、何かが違う。

 

♪でもー なにかが違うっ!♪

♪でーもーなにかが ちーがーうー♪

 

と鈴木ヒロミツの歌が頭の中で流れ出すのである。

 

 

エレベーターでイライラするということ

 

やっとこさっとこエレベーターから降りると、私の次に操作係になったヤツが

 

〝閉〟

 

ボタンを勢いよく

 

カチカチカチカチッ

 

と連打しておる音がする。

あのなあ、閉ボタンはゆっくりと押しゃあいいんだよ!

 

『この野郎!俺にイライラしてんのか!』

 

と振り向くとドアは既に絞まり、エレベーターは上昇していっている。

 

『くそう、エレベーターごときでイライラしやがって!』

 

『あ、そりゃ俺か』

 

と朝から反省するのである。

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つりばんど 岡村

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。 詳細プロフィールはこちら

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