ポン引き大捜査線
さっきポン引きが声をかけてきたコマ劇前に行くが、ヤツはいない。
が、他のポン引きがいたので
「あなたの仲間でさっき僕に声をかけてきたのがいるんですが、今どこにいるかわかりますか?」
と、声をかけるが
「知らない」
の一点張り。
頭に来てるので
「知らないっていうかさ、多分、ここらであんた達も同じサギ商売やっているんだから知ってるでしょ?」
と問い詰めるも
『なんのことやら』
の表情。
「あっそ、自分で探すから、まあいいや」
と言って、あっちのポン引き、こっちのポン引きに次々に同じように声をかけて回る。
そうこうししていると、にわかにコマ劇前がざわつき出した。
騒ぎの乗じて、さっきのカラコンダルマがいる!
で、夏なのに黒のスーツを着込んだ、ミナミの帝王じみたイカつい男に耳打ちしている。
『あのやろう、やっぱりグルじゃねえか』
と思い、カラコンダルマに近づいていくと、件のミナミの帝王が
「おい、兄ちゃん」
と来た。
ラスボス登場!
『こいつが元締めだな』
『こいつに金は返してもらう』
と決めた。
「おい、兄ちゃん。何やってんだ?」
「ここらにいた男に、自分の風俗店の女の子を斡旋すると言われてホテルに行って、ホテル代を払って、男に代金を払って男は去っていきました。
やってきた女も、また代金を払えというので、騙されたと気が付きました。
金を返してもらうために、さっきの男を探してるところです。」
「あのなあ、兄ちゃん。例えばタクシーに乗って、目的地に着いたが、それが目的地と違ってたからって金を払わなくていい訳がないだろう?」
「タクシーに例えるんなら、僕は目的地に着いていません。乗ってすぐ降りた形です。タクシーであれば初乗り運賃くらいで済むはずですが。
ホテル代を返せとは言いません。支払った20,000円を返してもらいます」
「そんなもんは、勉強代だと思って諦めな」
「20,000円は、僕にとって大切なお金です。勉強代には高すぎます。生活もままなりません。死活問題です。」
「生活に困るような金で遊ぼうとするなー!!!!!!!!!」
『まったく仰る通り!!』
と拍手したくなったが、ここで引き下がるわけにはいかない。
食い下がる若者
「じゃあ、さっきの男と直接話しますんで、紹介してください」
「おいおい、なんでそこまで必死になるんだよ?!」
「ですから、僕にとっては死活問題ですから」
などと言っていると異変に気が付いたポン引きどもが私と、元締めを取り囲む形になっている。
それに気づいてあたふたしていると
「な?ケガしないうちに帰れよ!」
と言われて、
スタコラサッサ
という風に歌舞伎町を後にした。
今、思い返してみると、登場人物全員悪人で
『誰にも感情移入できない話だな』
と思った。
つりばんど 岡村
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