もくじ
だいたい人は18キロから歩き始める
先述のカップルの彼氏が言った通りにトンネルを抜けた18キロ地点から歩く者の姿が目立ち始める。
もう走っている人より歩いている人の方が多い気がする。
スポーティーな感じの女性とかも普通に歩いているので
『こんなスポーティーな人が歩いてるんなら、俺も歩こうかな』
などと頭によぎるが、やはり先述の彼氏の言葉を思い出し
『30キロまではガマン』
と走り続ける。
脚が痛くなり始めたので、持参していたエアーサロンパスを吹きかけようと一瞬足を停めたら
ガクガクガクガクッ
と震え始めたので、これはいかんとすぐに走り出し走りながらエアーサロンパスを吹き付けるという技を習得した。
「歩くと二度と走れない気がする」
「歩くくらいなら、例え歩くより遅くても走る」
を30キロまでの自分への戒めにする。
※写真では躍動感がなく、とても走っているようには見えないが、本人達はあくまで走っている。
お仕事いろいろ
地方局の女子アナも同行のカメラクルーを連れて走っている。
軽快に走っているが、途中で停まって生放送の中継に答えたりして、とても辛そうである。
『仕事とは言え、42キロも走るなんて本当にご苦労さまだよなあ』
と慈愛の気持で見ていたが、よく考えたら42キロを一万円支払って出ている俺の方が、何を好き好んで走ってるんだかと自虐的になってくる。
それでも、とにかく走る。
28キロ地点でボランティアのおじさんが大声で
「ほら、走ればいーんだよ!走れば!」
と応援ともなんともつかぬことを言っている。
そんなことは、全員わかってんだこの野郎、と思う。
ようやく30キロ
30キロ地点に到達。
結構、貯金も出来たはずだ、と、もう歩くことにする。
歩くと、今までそこまで感じなかった脚の痛みが猛烈に感じるようになる。
走ることで痛みを感じにくくなるものと思われる。
すると、そこへダースベーダーのコスプレの男が仮面を脱いで走ってきた。
沿道から
「仮面被んなきゃダメじゃん」
の声がする。
このクソ暑いのに、ひでえこといいやがる、と思う。
ゴールまで12キロ、残り時間2時間半。
途中で
「間に合うかな?」
「このペースだとギリギリアウト」
と話し合っている声がする。
貯金しているつもりだが、実はギリギリであるらしい。
しかしながら、再び走りだす元気がない。
とりあえず、休憩がてら、しばらく歩くことにする。
歩いていると、35キロ地点で当初一緒に走っていたSと合流した。
試しに1キロ歩いて時間を計ってみたら15分かかった。
キロ15分。残り12キロ×15分=180分。
三時間。
タイムアウトである。
「7時間あればスタートからゴールまで歩いても完走できるとか言ってたヤツ(俺だが)いたけど、やってみろってんだよなあ」
とSに話しかけると、すぐ横に居たおじさんが
「本当にそうだよねっ!」
と激しく同意してきたので驚くと同時におかしかった。
(つづく)
つりばんど 岡村
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