かつて、ワールドプロレスリングというプロレス中継番組に於いて、大仁田劇場というものが存在した。
それは1999年代から2000年にかけて、プロレス界の邪道、涙のカリスマ大仁田厚が、プロレス界の王道、言わずと知れたストロングスタイルの老舗プロレス団体、新日本プロレスにたった一人でケンカを売り、引退していた新日のかつてのエース、長州力との一騎打ちに持ち込むまでの間に放送されたドキュメント(?)企画である。
出演者は、新日にケンカを売った大仁田厚と、テレビ朝日アナウンサー、真鍋由。
当時、ワールドプロレスリングはジュニアの試合などのサブの実況を担当していた真鍋アナ。
その真鍋アナが番組側のレポーターとして大仁田を追い続けた模様を放送していたのである。
が、この追い続けた模様がなんともプロレス的というか、恐ろしいというか、滑稽というか、バカバカしいというか。
なにげにもう20年ほど前のものであり、ご存知ない方も多く、少しでも大仁田劇場の風化を遅らせようと、かつて高校生の頃、大仁田厚と写真を撮ったものとして、書き起こすことにする。
読む大仁田劇場
試合終わり、興奮さめやらぬ大仁田。
集まった報道陣を介して新日の常務取締役に対して
「4.10の東京ドームの試合に出るための条件が2つある」
「ひとつは正々堂々を俺はタバコを加えて入場する。がタバコを落とすと問題になる。その際、お前らが灰皿になれ」
と、一文字も理解できない条件を突き付ける。
続いて
「二つ目は、レフェリー。俺の好かん新日の山本小鉄ではなく、みちのくプロレスのテッド・タナベを指名する」
「その二つが飲めなければ俺は4.10東京ドームには出ーん!」
と言い
カッと目を見開く。
怖い。
直後、急に柔和な眼差しになり
何かを悟った様な目をして
「・・・これがムシケラの意地じゃ」
と吐き捨てる。
ムシケラの意地が、タバコやらレフェリーやらなのが、あまりにムシケラで驚く。
その様子を報道陣の隠れて見守る真鍋アナ。
と、突然、大仁田が
「真鍋ー!」
と大声で叫ぶ。
「はい」
と答えて大仁田に近寄っていく真鍋アナ。
「おーい」
「おーい」
と言いながら一人、床に座りだす大仁田。
眼光鋭く真鍋を睨みつけて、アゴで座る様に指示を出す。
その場に座りそうになった真鍋アナに対してくぐもった様な声で
「こっち来い」
と声をかけるが真鍋アナには聞こえず、更にそのまま座ろうとする真鍋アナに対して
「こっち来ーいッ!」
と叫ばれ胸ぐらを掴まれ真横に座らされる真鍋アナ。
「真鍋、真鍋」
「これが新日本に出す条件じゃ」
「分かったか」
と先ほどの条件について、改めて真鍋に報告する大仁田。
ウンウンと頷く真鍋アナ。
すると
「分かったかーッ!」
とウンウンと頷いたにも関わらず、大声で理解したか否かを確認される真鍋アナ。
大仁田の発言に対し声に出してリアクションしなかれば「分かったかー!」と怒鳴られるのがお約束のようである。
大声に、やや驚きながらも、
「ハイ」
と答え
「この条件が通れば4月10日は東京ドームに来るということですね?」
と大仁田に尋ねる。
これに対し落ち着いた表情で
「ああ」
「約束するわあ」
と答える大仁田。
直後、
「おい真鍋」
「真鍋」
と言いながら立ち上がり、真鍋を正面に見据える大仁田。
「ハイ」
と小さく答える真鍋。
更に顔を近づける大仁田。
「その代わりなあ」
「男と男として・・・」
「男と男としてー!」
「男と男として約束しろー真鍋ー!」
とりあえず、何を言われるかはわからんが
「ハイ」
と答える真鍋アナ。
数秒、沈黙する二人だったが大仁田が
「俺の死に水は・・・」
「俺の死に水はッ!」
とやや落ち着きを取り戻し
「俺の死に水は」
「フーハ」
「フーハ」
「フーハ」
と息を整え
「お前がとれ」
と言って真鍋アナを見つめる大仁田。
面と向かって〝俺の死に水を取れ〟と言われても何をどうしていいやらわからず困惑する真鍋アナ。
しかしこの流れはまずい、先ほども書いたように大仁田の発言に対して黙っていると、「分かったかー!」と怒鳴られる流れである。
にも関わらず、そのまま数秒沈黙しているので、やっぱり
「分かったかーッ!」
と大仁田から突然ビンタされ吹っ飛んでしまったのであった。
(つづく)
つりばんど 岡村
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