もくじ
私の夢
私には夢があった。
それは毎晩フカフカのベッドで眠ることであった。
というのも、私は毎晩、安いマットレスを敷いて寝ており、やや寝心地が悪かったからである。
こんなマットレスで、もしも彼女が出来たらどーする!
こんな布団で寝てられっか!
彼女が出来る予定は微塵もないくせに、ただただ焦る日々。
ならばフカフカのベッドを買えばいいだけの話であるが、私はいわゆる安ロフトのある部屋に住んでおり、ロフトの天井が低いため、買ったとしてもベッドを運び込むことが出来ぬ。
だったら、ベッドのマットだけを買えばいいのだが、そんな重いものを持って梯子段を上るのは危険極まりない。
そのため、
『まあ、頑張って広い部屋に引っ越して、豪華なベッドを買えばいい』
と思っていたのだが、このご時世、なにをどう頑張っていいかもらかわず
『いつになったら俺はフカフカのベッドで眠ることができるんだろう?』
と思っていたのである。
夜中の通販番組
そんな折、2016年の秋、酔っぱらって夜中にたまたまテレビをつけたところ、某大手通販会社の通販番組が放送されていた。
紹介している商品は、ズバリ、某社のエラー式のラグジュアリーベッド。
電動式で楽に空気を入れたり抜いたりが出来るものである。
某社の男性社員や、一線を退いたゲスト俳優たちが、膨らましたそのベッドに横たわり
「えー」
「雲の上で寝てるみたい!」
などと感嘆の声を上げている。
また、簡単な電動方式でもって空気を抜いて畳めば片手で持てるほどのサイズに縮み、収納や持ち運びに最適だという。
「急な来客対策!」
「綿がないのでダニ対策!」
と立て続けにこちらに訴えてくる。
その番組を睨みつけるように眺めながら
『俺も過去、いろいろ通販には騙されてきたんじゃい』
『二度と騙されるもんか』
と思いつつも、なおも番組は
「スペース対策!」
「普段使いだけでなく、キャンプのお供に!」
と訴えかけてくる。
『んー・・・』
『そこまで言うなら値段が20,000円以下なら購入しよう』
と深夜に通販番組を観ている時の独特の心理状態に陥りながら価格の発表を待つ。
「一年保証付き!」
と言ったあと、気になるお値段が発表される。
お値段は、なんと、番組終了30分以内であれば、メーカー希望小売価格がダブルサイズで40,000円のところ、送料込みで27,000円だという。
自分の中の設定価格より7,000円オーバー。
にも関わらず私はスマホを握りしめ、画面に表示されている番号にあてて
「番組終了30分に間に合わねばえらいこっちゃ!」
と言いながら電話をかけていたのである。
商品が到着した!
で、通日後、ブツが到着。
ロフトに持ち込み、電動で空気を入れながら
「ああ、私もラグジュアリーな睡眠生活にいよいよ突入するのだなあああ」
などと感慨深く思い、ベッドが膨らみ切ったところで就寝。
寝心地は、番組で三流俳優が言っていたような
「雲の上で寝ているみたい」
などとは思わなかったが、それなりにフカフカで、多少、中で空気が動くようで、急に
「ボンッ」
と音がするのには驚きつつも、大満足でいたのである。
『ああ、これでいつ彼女が出来ても安心だ』
『ありがとう、俺の、ラグジュアリーベッドよ』
と思っていたのだ。
※これが新品のラグジュアリーベッド。
ところが…
それから、一年半ほど、まったく彼女は出来ないどころか、出来る予感さえも全くなく迎えた2018年3月。
寝ていると、夜中に猛烈な背中の痛みで起きた。
我が愛しのラグジュアリーベッドがフカフカだった、ラグジュアリーベッドが、ペラペラになっているのである。
トムとジェリーのトムが重いものに押しつぶされた時のようにペラペラなのである。
『あれ?空気抜けちゃったのかな』
と思い、改めて電動で空気を入れなおして眠るが枕元の辺りから
「プシューーーーーーーーッ」
と明らかに空気が抜ける音がしている。
仕方なくそこを手で押さえてその日は朝まで眠ったのである。
勿論、朝にはベッドはペランペランになっていたが。
※朝、この状態になっていた。
原因は、穴?
穴をよく見ると、マットにはいくつかの次あてのようなものがあるのだが、その一つが剥がれたようになっているのである。
※これが穴おいうか、裂け目である。
さっそく100均でビニールテープを買ってきて、マットの穴の開いている部分に貼り付けたが、その行為をあざ笑うように、空気はビニールテープを吹き飛ばしてしまう。
悔しさの余り、翌日から私のホームセンター巡りが始まった。
ホームセンターにさまざま種類のテープを買いあさったのである。
が、どれもこれもこのマットから吹き出す空気の勢いを止めることが出来ず。
自転車のパンク修理の道具で対応できぞうだが、穴が針の穴のような小さなものでなく、タイヤ交換レベルに空いているのでどうにもならない。
背中と腰を痛める
で、仕方なく、そのペラペラのベッドの上で寝るようになった。
毎朝、背中で痛いので、バスタオルを敷いて寝ていたがとにかく背中や腰が痛い。
で、5月までそのまま寝ていたのだが、毎朝の背中の痛みに我慢できなくなり、
『27,000円もしたのにわずか一年やそこらでこんなになるなんて』
『一年保証が過ぎているが、過ぎたといっても数か月だしなんとかならんか?』
と某通販会社に電話し、数日後、ラグジュアリーベッドのメーカーから連絡が来たのである。
メーカーからの回答によると
「ご迷惑をおかけし申し訳ございません」
「しかしながら保証期間を過ぎておりますので」
「有償での修理対応になります」
「ブツを元払いでメーカーあてに郵送していただき」
「到着し次第、修理の可否を確認します」
「修理可能な場合、修理前に見積りをお出しします」
「修理不可能な場合は、新品と同様の品を12,000円で送付が可能です」
とのこと。
送ってもどうせ新品と同様のものを12,000円でっていわれそうだし、送料もこちらもちだし、たとえ買ったところでまた一年半もすれば同じことになりそうだし。
と私は今、迷っているところです。
まとめ
あの日、あの通販を観なけばこんな目に遭うことは無かった。
あの日の三流俳優が憎い。
お前が毎晩これで寝てみろ!
「雲の上で寝てるみたい!」
これが雲の上か!
「急な来客対策!」
急な来客をこれで寝かせられるか!
「綿がないのでダニ対策!」
※もはやダニの問題もへったくれもねーわ!
だいたいなあにが、ラグジュアリーだ、この野郎!
もしも彼女が出来たらどーしてくれるんだバカヤロウ!
(その心配は無いような気がする)
つりばんど 岡村
最新記事 by つりばんど 岡村 (全て見る)
- 保護中: テスト104 - 2023年10月21日
- 舞いあがれ!片づけいらずの紙ふぶき - 2021年2月26日
- コサックダンスが踊れるマシーン! - 2021年1月3日
最近のコメント