もくじ
マイノリティーであるということ
私の幼馴染に恐らく日本で一人だと思うが映画『湘南爆走族』フリークがいる。
などと書いても『湘南爆走族』がわからん人も多いので一応説明する。
神奈川県の湘南海岸を舞台とし、2代目リーダーの江口洋助をはじめとする暴走族「湘南爆走族」メンバー5人と、地獄の軍団など他の暴走族などの登場人物やグループを中心に友情や恋愛などを描いた漫画。
出典)湘南爆走族 – Wikipedia
で、1987年に、それを実写化した映画であり、江口は映画初主演、織田・清水のデビュー作である。
と、私の幼馴染はこの映画の何にハマったのかさっぱりさからんが、もう連日連夜この映画のことを考え続け、勿論ソフト化され次第購入するし、その関連のCDなんかも全部揃えるという熱の入れようだった。
消された?映画、湘南爆走族
が、数年すると、この作品でデビューを飾った江口洋介、織田裕二の両名はそれぞれ大ブレイク。
大ブレイクしてトレンディードラマなんぞに出ては持て囃されておったのだが、持て囃されれば持て囃されるほど江口、織田の両名は、この映画に出ていたことを自身の黒歴史であるかのように隠し、〝なかったこと〟として
「湘南爆走族の、しょの字も出してはならんぞ」
「出したらただじゃ済まさねえぞ」
などという感じで世間を威嚇。
そのため、江口、織田の両名にインタビューする際などは、決してデビューのきっかけなどの話は持ち出さないことを義務付けられていたのである(気がする)。
ひとりぼっちのクーデター
そんな風潮に業を煮やした先述の私の幼馴染は
「我が愛する湘南爆走族をなかったことにするなど許せん」
「だいたい江口洋介の芸名は原作の湘南爆走族の主人公の名前、江口洋助の助の字を介に直して芸名としているくせに」
「なにが〝101回目のプロポーズ〟だ!」
「あと、織田裕二も織田裕二だ」
「〝東京ラブストーリー〟じゃねえ!お前はどこまでいっても湘爆のアキラだ!」
「俺はアイツのCD、湘南爆走族の挿入歌『BOOMBOOMBOOM(ブーンブーンブーン)』を未だに聴き続けているというのに」
と悔しがっておった。
そんなある日、この幼馴染は本屋で当時人気であった男性向けファッション雑誌〝BOON(ブーン)〟の表紙に織田裕二が載っているのを知り、
「織田裕二が湘南爆走族に出てたこと、忘れさせねえ」
と誰にともなくつぶやきながら、織田のデビュー曲『BOOMBOOMBOOM』と読ませるために、近隣の本屋へ行っては織田裕二が表紙の雑誌〝BOON〟を三冊横に並べるという奇行に走ったのである。
熱狂的なファンというのは怖いなあ。
つりばんど 岡村
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