もくじ
世界人類全員賛成の意見
世界中の全ての人に賛同を得るのはとても難しい。
〝地球は丸い〟
という地球球体説を例にとっても
「いや、地球は丸くない」
「平面だ」
とする地球平面協会もあるくらいだが、
〝午後の講義を聞くのは眠くなる〟
というのは、世界人類全員が一点の曇りもなく肯定できる意見である。
昼食後の講義の目的
「今日は何々の説明会が午後、昼食後にある」
と知らされ仕方なく出席するのであるが、まず、午前でもなく、午後遅くでもなく昼食直後にあるというの点に悪意を感じる。
本当をいうとこの講義は、別にいつの時間帯でも良いのだが、意地の悪い講師が
「俺、みんなが眠いのを堪えて苦しんでいる姿をみるのが三度の飯より好きなんだよね」
という考えのもと、昼食直後に時間を設定しているのである。
講義が始まる
会議室に入って行くと、いじわる講師が待ち構えている。
「どうも」
などと言って会釈などしておるが、心の中では
『いったい君は、何分耐えられるかな?』
と一人ひとりの顔を根目回してニヤついているのである。
着席して印刷物が配られる。
『あー、とうとう始まっちまったよ』
『めし後の講義は必ず眠くなるんだよなあ』
と思っていると講義がはじまった早々から、案の定まぶたが痛くなるほどの眠気に襲われることとなる。
いじわる講師は、まるで赤ん坊を寝かしつけるように優しい声を出して印刷物を読んでいく。
抑揚もなければ、説明をする気もない。
ただ、眠気を我慢させるためだけに敢えて淡々と読む。
「・・・と、なってまあす・・・」
等と、しっとりと聞かせはじめ、声質もダークダックスじみてくる。
いじわる講師は会場を見渡し
『お、あいつ、あくびを隠そうとして思いっきり目と鼻の穴が開いちゃってるよ』
としたり顔。
あくびをしている方もしている方で
『これモロにあくびしてるけど、目と鼻の穴を大きく開いた状態で』
『そのうえで、こうやって大きくうなづけば』
『説明に激しく納得している人と勘違いするだろう』
と浅はかな考えを持ち出し始める。
講師の方では
『こちとら、そんな顔されるほど納得されるような話はしてねーや』
とほくそ笑むのである。
とにかく早く終わってくれ!
講義はまだまだつづく。
内容など、いっさい頭に入ってこない。
頭の中は、ただただ
『・・・眠たい』
の一言のみ。
『まったく、眠りたいのに眠れないときもあるのに』
『眠ってはいけないのに、こんなに眠いときもあるなんて』
『世の中、うまくいかんなあ』
『・・・・・・・・・』
『この講義を録音しておいて、眠れないときに聞こうか・・・』
『・・・・・・・・・』
バサッ
と印刷物を一斉にめくる音で目が覚め、一瞬眠ってしまったことに気が付く。
バレていないか慌てて講師の方をみると、完全にバレており
『あんたの記録、36分ね』
という表情をされるのである。
講師が憎い!
少し反省し、気持ちも新たに説明を聞こうとするが、とにかくまぶたが痛い。
指で、まぶたと眉間をつまんでゴリゴリやるが、痛みは全くとれず、なんの効果もない。
指をまぶたから太ももに移し、思い切りつねるが痛みで眠気が取れるわけがないことを知るのである。
このあたりから
『っていうか、さっきから訳の分からんことをグダグダとこの野郎』
と憎悪が芽生え、講師を睨んだりする。
講師は
『お!その目だよその目!』
『俺がわざわざ昼食直後に説明会を仕込んだのも、すべてはその、憎しみで燃え切った目をみたいからなんだよ』
と異様な性癖を満足させるのである。
いよいよ、一通り説明が終わり、ほっと一安心する。
『もうコリゴリだな』
と思っていると
「なにか質問のある方いますか?」
「・・・・・・」
『誰か質問しやがったらひどい目に遭わすぞ』
と思っていると
「あの、三ページ目のところなんですが・・」
などと質問をして、さらに講義を続けるように持っていくヤツが必ずいる。
他の全員が
『このバカ!』
と、そいつを恨み、講師への憎しみも増してくる。
講師は
『あー、こんな大人数から憎まれるなんてゾクゾクしちゃう』
などとハードコアな憎まれマニアぶりを益々発揮するのである。
実は、この必ず最後に質問をするヤツは、講師からいくらか金をもらっており、本当はしなくていい質問をしているだけなので講義が終わったら袋叩きにしてもよいと紀元前からハムラビ法典に書かれているのである。
(書かれてません)
つりばんど 岡村
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