もくじ
奈良の研修センター
さて、いよいよ奈良県の某企業の研修施設へ夢と期待ではなく、逃亡の決心で胸をいっぱいにして参加。
辞めることは親兄弟にも内緒にしていたので、この泊りがけの研修に向けて母ちゃんが下着類を買って渡してくれ胸が痛んだが、この際、心を鬼にするしかない。
研修は軍隊の様相を呈し、
〝プロ戦陣訓〟
なる、なにか金言めいたものを絶叫に近い大声で全員で唱和するものや、体を不自然に揺らしながら行う発声練習じみたものを終日行い早めの夕食をとって一日目の研修カリキュラムは修了。
一日目の夜
二人一室の部屋へ入り、逃亡に備えて考えを巡らしながら湯船に浸かっていると
「ごめん!どうしてもムリ!!」
と叫びながら風呂場に同室のデブが転がり込んできて下半身を露出してきた。
(俺は異性と交遊する前に同性のこいつに押し倒されるのか!)
と思っていると、あろうことかデブはユニットバスの便座に腰を下ろし脱糞行為を始めたのである。
「ああ、気にしないで」
等と許せるはずもなく、せめてもの抵抗として思い切り、できうる限りの大きな舌打ちを鳴らし、これ見よがしにシャワーカーテンを勢いよく閉め
「何が、どうしてもムリだ!」
「それはこっちのセリフだ!」
と吐き捨ててやったが、気持ちは収まらず、超至近距離で赤の他人の現在進行形の排泄物の臭いを嗅がされたため、猛烈な吐き気と共に、脱走の決心も込み上げてくるのであった。
逃げるって難しい
しかし、風呂から上がっても出ていく決心がつかず、同期の連中に
「俺、今夜出ていくから」
と告げて回るも
「逃走しないほうがいい」
「ちゃんと、言って辞めたほうがいい」
と今になって考えればごく当たり前なアドバイスをもらい、とりあえず一日目は就寝。
緊張の二日目
二日目、研修施設の講師が
「やる気の無い者は去れ!」
「本日も死ぬ気でやりぬくぞ!」
と号令をかけて昨日同様、軍隊式の研修が開始された。
昼食の際、講師に
「あの~、やる気がないんで去りだいんですけど~」
とおずおずと話しかけると
「なに~っ!!!」
と大声をだし、襟首を捕まれるようにして引率のN部長に引き渡されたのである。
つづく。
つりばんど 岡村
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