【ギャンブル必勝法?】最後の最後の最後の最後に勝つ方法3/4

魔の巣窟Hのマンション

Hのマンションで、元バンドのメンバーで集まった。
当時酒が飲めなかったので、一人ウーロン茶を飲む。

Hは手帳をめくりながら

「この間の俺の負け分、いくらいくら、お前に払うわ」

と言いながら金を払ったり、

で、購入した酒やツマミの代金を割り勘にし、こまかく手帳につけながら

「負け分から今日の割り勘分を差し引いて、あといくらいくらね」

などと言ってくる。

よっぽど金に汚くなった模様で、昔のバンド時代の清々しさなど微塵もなく悲しくなる思い。

で、案の定支払いについて言及されたが

「次、金が出来たら払う」

と言って逃げた。

Hは

「絶対に払ってもらうからな」

など言っていたが酒に酔ってそのまま寝てしまった。

雑魚寝風景

で、他のメンバーもそのまま酔ってごろ寝。

『支払う金は無いし、それどころかサラ金に払う金さえままならんし、まったく俺はこの先どうなってしまうんだろう?』

などと考えいつになく落ち込み、元気も全く無い。

私一人が固い床で眠れずに壁にもたれて座りながら、始発までの時間を待つ形になったのである。

寝ているHの顔をみる。

寝ている顔だけは昔のバンドの頃の、一緒にベースのヤツのチャリンコのサドルを外して、サドルが刺さっていた穴にでっかい〝祭〟と書かれたウチワを突っ込んだ頃のHである。

『変な組織に入ったあたりからおかしくなったんだな』

と憐れむが、憐れんでばかりもいられん。

『母ちゃんの財布から金をくすねるしかねえんだなあ』

『ああああ』

と思いながらHの顔をみる。

『どうでもこいつは私に金を払わせるつもりなんだなあ』

『ギャンブルは恐ろしいなあ』

『友情もへったくれもねえんだなあ』

『世の中は厳しいもんだなあ』

と更に落ち込んでいたが、Hの顔をマジマジと睨んでいると

『くそ、この野郎のせいで』

と思うと、ムカクカする思い。

『この野郎のせいだバカヤロウ!』

と、自分が悪いのではなく、全部Hのせいだと思うと

『なんで俺がこんな目に遭わなきゃならんのだ!』

『絶対に負けねえぞ!』

と急に、いつもの悪魔のような性格の自分を取り戻し、にわかに元気が復活!

『なあにがギャンブルだこの野郎!』

『酷い目に遭わせてやる!』

と、どう仕返ししてやろうか考えているとHがグーグーとイビキをかきはじめた。

『のんきにイビキなんぞかきやがって』

と思ったとたん、ふと、

『母ちゃんではなく、こいつの財布から金を奪ってやろう』

『こいつの財布から抜き取った金でこいつに支払ってやろう』

という知恵が湧いたのである。

まあ、それを知恵っていうのかは別として。

(つづく)

投稿者:

つりばんど 岡村

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。 詳細プロフィールはこちら