敵は公民館にあり!
自転車に乗って数分で公民館近辺についた。
たかだか高校生のコピーバンドだが、結構人だかりができている。
まずは、ライブが始まって、これらのギャラリーが会場内へ入るのを、件の〝祭〟と書かれたでっかいウチワを持って、物陰に隠れてこっそり待つ。
ギャラリーを見れば、麗しき商業高校女子も満載だ。
こんな方々と、いつも授業を受けているNが羨ましい。
一方、男子生徒の方は、Nと似たり寄ったりの、せいぜいがプリントシャツか、柴田恭兵を意識したジャケットじみたものを着こんで、これ見よがしにタバコをくわえたりしているバカ者しかおらぬ。
『普段から虐げられている工業高校生代表として』
『こいつらに一杯食わしてやらなければならん』
の思いを強くする。
しばらくしてギャラリーが会場内へ入って行ったので、我々も建物に近づいていく。
Nに、どう恥をかかせるか?
ライブが終わって、女子高生の前で恰好をつけるであろうNにつかつかと歩み寄り
「あ、これ忘れ物だよ」
とNに〝祭〟のウチワを持たせて逃走しようということにした。
嗚呼ビーバップ野郎
「はやくこんなクソライブ終わりやがれ!」
などと言っていたら、体がデカくて頭も態度も悪そうなのを筆頭に数人の男が近づいてきた。
Nと同じ商業に通うドラムのHの同級生らしい。
「おい、H」
「こいつら何なんだ?」
などと言う。
ライブやっているのが、ストーンズなら、こいつらはヘルズエンジェルスの役割をしているのかもしれない。
『悲しきビーバップ直撃野郎め』
と思っていると
クレージー且つ、負けん気も人一倍強いギターのKが
「なんだてめえ!」
と、食ってかかろうとする。
温厚なHが慌てて
「友達友達、Nの友達!」
とKを制して
「なんだ、友達か」
「だったら早く言えよ」
等と言って、会場に入っていった。
ギターのKの全身に青白い炎がメラメラしているのがわかる。
こいつを怒らせるなんて
『こりゃあ、しらねえぞ(笑)』
と思うのだった。
(つづく)