【40代のリアルな婚活】 泣き笑い合コン劇場【一挙読み】

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2016年の年末の話

 

2016年の年末の話。

五歳下のなぜか私をアニキと呼ぶ職場の後輩が

「もうアニキもいい年なんだから、ここらで真剣に結婚を考えたらどうですか?」

「考えるもなにも相手もいないのに何を考えるの?」

「いや、俺も何のアテも無にこんなことを言いやしませんや~」

と急に下卑た口調で話してくれた内容によると、その後輩が数日前に行った中学の同窓会で、婚活中の女性と知り合いになり、私がいつまでも独り身でいることを思い出して、その女性とのコンパを設定してくれるという有難い話。

相手も二人組でくるらしい。

後輩は既婚者だが、どういう目的でコンパにくるのかは、私には今ちょっと思い出せない。

とうに結婚を諦めた私にとっては半ば今更感もあったが、自分から求めた縁ではなく、こうした他人から持ってこられた縁というのは

 

「何かの引き合わせかもしれない」

「神無月に出雲で神様連の会議で、いよいよ私の番が決まったのかもしれない」

 

と、後輩には

 

「まあ、会うだけ会ってみるよ」

「君の顔も立たんだろうし」

 

などと口ではいっても、鼻の穴は冠のジロちゃん状態。

 

「だったら善は急げってやつで!」

「相手はクリスマスまでに何とかと言ってますんで、早いとこ決めちゃいましょう!」

 

と、話はとんとん拍子に進み、数日後の金曜、夜9時に会は開かれることとなった。

 

悪い癖とは知りながら

 

まず、こういう時にしてしまう私の悪い癖なのだが、一人で勝手に計画が暴走すること。

この時も、あれこれ考えていると

 

「というかこんなアパートで暮らしているわけにもいかんな」

「二人で住める物件というのは一体いくらぐらいが相場なんだ?」

 

とあれこれ調べるうちにSUUMOだとかHOME’Sだとかという賃貸住宅情報のアプリをダウンロード。
良さそうな物件を見つけたので雨の中を自転車で遠征。

土地勘もなかったので見つけるのに苦労し、二時間半もの間、自転車で物件から職場まで自転車での所要時間を体感したり、バスの時刻表などを丹念に見て回るという、我ながら超ド級の採らぬ狸の皮算用をすることとなった。

 

 

 

明日は合コンの日

 

いよいよ開催が明日となったある日。
件の後輩が

 

「アニキ、店はどこですか?」

 

と来た。

 

「え??!」

「俺が店を予約するの?!」

「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ」

 

と肝を冷やす。

今から翌日の年末の金曜日の夜9時に店がとれるのか?

いや、とることはとれるだろうが、どんな店でもいいわけではない。
ここは個室でなければならない。
また、ある程度、おしゃれ過ぎず、下品過ぎず、チェーン店ではなく、雑誌にも紹介されておらなければならず、ぐるなびの星も3.5以上でなければならず、駅近でなければならず、だが私は元々ここ新潟で、そんなに知っている店もなく、だがしかし、ここで店を抑えられねば会う前から

〝出来ぬ男〟

の烙印を押されてしまいかねない。

 

 

 

さて、どうするどうする???!!!!

と焦っていたところへ、後輩が

「アニキ、俺、できれば刺身が上手い店がいいっすねえ~」

と抜かす。

 

なあにをのんきに!

首の骨へしおったろか!

 

と思いつつも必死でホットペッパーを超高速でめくり、目ぼしいページをゴリゴリと折ったりしていったのであった。

突発的な居酒屋の予約

 

さっそく目ぼしい居酒屋に電話するが

 

「満席です」

「個室でなければ」

 

という返事。

中には

「年末の金曜の21時に、前日に個室の予約など、気でもおかしくなったのか?」

と言わんばかりの対応をするお店もあり、讃嘆たる思い。

しかし一店舗だけ、駅からは遠くなるものの、

 

「なんとか9時に前のお客の宴会が終わる予定」

「9時を過ぎて少ししてから構わないなら」

 

というお店があり、どーにかこーにか携帯電話に向かって土下座するように感謝して個室を確保してもらうことが出来た。

 

これで、出来ぬ男から一転、出来る男の烙印を押していただけると、胸をなでおろそうとしたが、

 

「いや、明日、店が見つからなくて迷ったりしては出来ぬ男の烙印を押される」

「下見だ!」

 

と、仕事終わりに一回、翌朝の出勤前に一回、合計二回の下見をしにいったのである。
我ながら涙ぐましい。

 

 

決戦の金曜日

 

さて、迎えた当日、いつものように働き、就業時間が近づいてくると、件の後輩がソワソワしだす。

 

「顔の脂をとるウェットシートありますか?」

 

とか

「整髪料持ってませんか?」

 

とやたら聞いてくる。

この日に備えて持ってきている自分も自分だが、それらを貸してやる。

 

また、何かにつけて、用事もないのに私のところにやってきて、

で、

 

「アニキ、今日は仕事の話はなしで!」

 

などと言ってくる。

そんな席で仕事の話なんかしない。

 

ちょっとするとまたやってきて

 

「アニキ、相手のことを気に入ったかどうかのサインを決めときましょう」

「会話の中に、なんとなく相手の点数を織り込んで話してください!」

そんな高等テクニックは持ち合わせていない。

しばらくすると、またまた思い出したようにやってきて

 

「アニキ、残念なお知らせがあります!」

「何?」

「アニキ、今日、ランニングシャツ着てますね?」

「ランニングっていうか、Yシャツの下はノースリーブの下着だけど」

「ブー!(不正解の音のつもりらしい)」

「女の子は、ランニングシャツはおじさんっぽくて嫌いなんですよ~」

 

ややムッとして

 

「じゃあ、ジャケット脱がないからいいだろ」

 

と言うと、ちょっとニヤけて

 

「じゃあ絶対、ジャケット脱がないでください!!」

 

ビシッ

 

という感じで、私の顔に向かって指をさす。

 

 

だんだんむかついてきたが、その後、コンビニでTシャツを買って着替えた自分にも忸怩たる思いがした。

ようやく居酒屋へ

 

仕事が終わり、二人して店へ向かい、時間よりも15分ほど早く店の前についた。

件の後輩は相変わらずウヒョついておる。

ウヒョつくどころか、ソワソワし出して

 

「アニキ!店入る前に、どっかで一杯ひっかけていきませんか?」

 

などと言い出した。

 

「一杯飲むって、今から一杯飲むんだよ?」

 

「いや、だからその前にビールだけ一杯!」

 

「まあ、別にいいけど、もう相手の人たちくるんじゃない?」

 

と言ったが、耳に入っていないらしく、一人でズンズン歩いていき、よくあるTVが点いている小さな居酒屋に入っていく。

ドカッと席に座ると

 

「生二つ!」

 

などと勝手に、且つ横柄に言い、出てきたおしぼりで顔をゴシゴシと拭く。

おしぼりを首に回して、うなじから耳の中まで、ゴッシゴシゴッシゴシと拭く。

この男にランニングシャツがどうこう言われたことが腹立たしい。

 

顔を拭き終えると、出てきたビールを一気に飲み、叩きつけるようにジョッキを置くと

 

「よしっ!」

 

と言い

 

「ゲフッ」

 

などと漏らしてレシートを掴んで立ち上がり、出ていこうとする。

 

私はまだ一口も口をつけていなかったので、慌ててビールを飲み、後輩を追いかけるようにしてレジへ行く。

で、きっちり割り勘。

 

チャカつき続ける人

 

「よく、一杯だけのもうなんていって誘われることあるけど、本当にこんなに一杯だけなんて、お店の人も驚いていたろうね」

 

と話しかけるが、こちらの話は全く耳に入っておらず、上の空で、ジャケットやズボンのポケットというポケットを叩いたり、かき回したりしながら

 

「えーと、タバコを買っとかなくちゃいかんな」

 

とつぶやき、タバコ屋を探してキョロキョロしている。

タバコ屋は彼のすぐ背後に有ったのでその旨を教えると

 

「ああああ」

 

などと言いながら

 

〝そんなことは言われなくても、そもそもわかってますよ〟

 

というような表情をし、自動ドアにぶつかりながらタバコ屋へ入っていき、タバコを買うと、転げ出るように、再び自動ドアにぶつかりながら出てきた。

 

で、タバコに火をつけて深く吸うと、待っていた私に対し、

 

「アニキなんか緊張してるみたいですね!」

 

「って、おめえだよ!!!」

 

と一喝して、ようやく待ち合わせの居酒屋に入っていったのである。

いよいよ合コン

 

思わぬ寄り道で、21:00ギリギリになったが、幸い相手側はまだ来ておらず、時間に遅れることなく店に入ることができた。

 

フスマを開けて用意されていた個室に入ると、件の後輩(もうヤツと書きますね)が、奥に入っていき壁に背を付けてドカッと座る。

 

「こういう時、俺たちがフスマを背にして座っておくべきじゃないの?」

 

と言うと

 

「ああ、そうか、最近、会社の飲み会では役職の関係で上座に座らせられることが多かったからなあ」

といい、フスマを背にして座りなおす。

いかんいかん

えっへん

とでも言いだしそうな、言い草である。

 

(バカが!)

 

と思いながらオッサン二人で横並びになっていると、ヤツが斜め上をみたままの形で、ポケットから何かを掴み、私の方に向かってテーブルの上をスライドさせるように

 

「あちらのお客様からです」

 

の要領で、何かを投げつけてきた。

 

 

 

私の目の前にはカクテルではなく、GODIVAのクッキーの小袋が5つ。

これは数日前、職場に札幌の営業所の者がうちの職場に来た際に、手土産に持ってきたものである。

なんで、こいつがそれを今ここで私に投げつけてきたのか?

 

ヤツの真意がわからず、GODIVAのクッキーを見つめ、言葉もなく黙っていると、ヤツは斜め上を見ながら

 

「これ、札幌出張に行ったときの土産だと言って、女性陣に渡してください・・・」

 

という。

 

「は?」

 

 

 

よくわからなかったが、つまりは、

〝札幌に出張するほどの男ですって、まあウソですが、見せつけてやってください〟

〝高級サラリーマンの振りして女性の心を鷲掴みにしてください〟

 

などというつもりらしい。

 

「っていうか、なんでGODIVAなの?」

「花畑牧場とか白い恋人とかならわかるけど?」

 

といったが、ポカンとしている。

『GODIVAってなんだべ?』

という顔をしている。

更に

「GODIVAは新潟にもあるだろ」

「で、お土産なら普通、箱で渡すだろ」

「なんでお土産をバラでもってこなきゃならんの?」

「っていうか甘いもので女心は鷲掴みにできるものなのか?」

 

と詰問したが、さらにポカンとしている。

 

『札幌に出張に行く男って、女心を掴めるべ』

 

とでも言いたそうである。

 

(バカが!)

 

と思う。

 

 

いよいよ女性陣がやってきた

 

狐につままれた表情とは、今のこいつの表情のことなんだなと思いながらあきれているところへ女性陣がやってきた。

 

が、相手も私をみる表情からして今回の話はなかったことにしようというのがありありとうかがえる。

こうなれば、今回はこの会を無難に楽しい思い出で終わらせよう。
なるべく私は〝粋〟に済まそう。
会計は、女性陣が気が付かぬうちに済ましておいて、スマートな感じで解散なり二次会に行こうと決めた。

 

女性陣がさっそくメニューを見た直後、見て、何にしようかほんの2秒ほど考えたところで、ヤツが

 

「あ!」

 

「言~っときますけど~!」

 

と節をつけて言い放ち、

 

「今回の支払いは我々男性陣で持ちますから!」

「遠慮せずにドンドン!」

 

と抜かす。

 

今、メニューみたばかりだし、別に遠慮してねーし、高い店でもねーし、無粋極まりないわー

と赤面する思い。

 

で、会話はヤツが主体となり、主に仕事の話を、自分たちが務める会社がいかに大きくて、将来的に安定しているかを、ウソ、大げさ、紛らわしい の広告だったらJAROに相談するレベルの脚色で話して聞かせ、話のまとめでは必ず

 

「ねえ?岡村さん」

 

と私を共犯にしていたが、酔いが回ってからは

 

「そうですよね?アニキ」

 

と柄の悪いところが噴出。

もうこいつとの合コンはコリゴリだと思いながら会は進行。

会計の段になるとベロベロになって、呂律の回らない口調で

 

「アニキ、すいません、金かしてください!」

「給料日には返しますんで!」

 

と言う。

 

何が、ここは男性陣が持ちますだこの野郎、金も持って来てねえんか!

 

と思う。

で、二次会に行って解散した。

その後も、アニキ、アニキと口ばかりのヤツのこの後の行動はどんどんエスカレートしていったのだが、具体的な行動は、本人も記憶がないと言っている上、著しく本人の社会的地位も剥奪しかねないため、割愛します。

 

 

数日後

 

後日、久々に職場で彼と顔を合わせた際、

 

「アニキ、合コンの金の件ですが、後日ちゃんと清算しますんで!」

 

と言ってきたので

 

「金の清算はもういいから」

「お前との関係を清算したいわ」

 

といったのは、あながち冗談ではなかったのだが、今現在も彼はそれがわかっていない模様である。

 

 

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つりばんど 岡村

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。 詳細プロフィールはこちら

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