退職はしたけれど
高校卒業後、わずか一か月で就職した電気量販店を逃げるように辞めた私は(というか実際に逃げたのだが)、実家住まいとは言え、一刻も早く上京する資金を蓄えねばと職探しに焦っていた。
焦ってはいたが性根があまちゃんの私は
「どうせなら女だらけの職場がいい」
と考えていた。
というのも、私は中学を卒業し、入学したのが女性が学年に4人程度いるだけのくせに、男女共学などと謳っている、実際はムサい男どもの掃き溜めのような工業高校であり、
「懲役三年!」
「執行猶予無し!」
などと思い、我慢に我慢を重ね、三年間をどーにかこーにかやり過ごし、念願が叶い忌々しいその工業高校を卒業を迎え
「家電量販店なら女性がわんさかいるはずだ」
「女性と共に働き、上京の資金を稼ぐ」
と思って選んだ就職先だったが、入社後数日間行われる研修の座学時は、入社した30名のうち半数が女性であり、中学以来の異性との交流に鼻の穴は北島のサブちゃん状態になっていたが、配属された店舗は、何の因果か、これまた男だらけの店舗であり、給料は安いわ、店長は墨汁の臭いがするわ、無いと聞かされていたノルマ達成のために
「親戚にシャワートイレ売ってこい」
と言われたことをきっかけとして、店舗配属の数週間後に行われた、奈良県の研修センターでの研修中に逃げ出したのである。
ギターのKの場合
当時、親のスネを齧って一人で上京し、音楽の専門学校に入学した元バンドメンバーのKは、カラオケ店でバイトをしていた際、お客の中年カップルが頬を寄せあった上、抱き合うように往年のヒット曲、『キッスは目にして』を熱唱しているのを横目に空いたグラスなぞを片づけておったそうだが、その際
「キッスは目にッ♪キッスは目にして~」
と、
「キッスは目にッ♪」
と決めた後、一旦ブレイクを挟み、改めて
「キッスは目にして~♪」
と歌ったことに我慢がならず、一緒にグラスを片付けていた店長に、その場で
「辞めます」
と言って片づけをほっぽり出し、♪デュワッデュワッ♪などというコーラスが流れる中、バイトを辞めたそうである。
(つづく)
つりばんど 岡村
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