もくじ
スベれどもスベれども
スベったことに気が付かず、同じギャグを繰り返し言うヤツがおる。
もう何度も何度も言う。
受けるまで言う。
うるさくて仕方がない。
こういうつまらんギャグを繰り返し言うのは、会社の中でもやることが無い、たまたまはずみで昇進しただけのバカ上司である。
このバカ上司は、
『会社には私のユーモアが必要だ』
『部下どもの今年の笑いはじめは、私のギャグで幕開けさせてあげよう』
などと大きな勘違いをし、こっちは素直に嫌悪感を感じているだけにもかかわらず、
『素直に笑わせてあげるから…』
などと、たわけた事を思っているので腹が立つのである。
バカ上司のギャグ風景
このバカ上司のギャグは、会議の席など発せられることが多い。
で、そのギャグとやらは、せいぜいがシンポジウムを、チンポジウムなどと言い換える程度の、ご時世的にもハラスメント以外の何物でもないものなので、スベッたとかスベらないとかの問題じゃく、聞かされた全員が聞こえなかったフリをして、黙殺しているにも関わらず、言ってる本人は
『アレ、ちょっと声が小さかったかな?』
『聞こえなかったのかな?』
と思い、再び
「いや、次回のチンポジウムではね~」
「ガハハ~」
と、大きく上半身を横に傾けた恰好で同じギャグをのたまう。
が、やはり黙殺されるので
「アハ」
「アハ」
「アハ」
と三回アハを繰り返し、誘い笑いを誘発しようと目論見ながら、会議の出席者全員の顔を代わる代わる見渡していく。
『一人でも笑わせればこっちのもんだ』
『そこから笑いのダムを決壊させる』
と訳の分からんことを考えているのである。
あまつさえヒクヒクと肩を大きく揺らして首をすくめる動作を繰り返しながら顔を見渡していくが、もちろん誰も相手にせず、このバカ上司と目が合わぬように視線を机に落として、聞かなかったことにして次の議題に移っていく。
が、それを見た上司は
『みんな笑いたいのに我慢をしている』
『我慢しなくていいんだよ』
『やっぱりこの会社には私のユーモアが必要なんだよナ…ユーモアが…』
と、うっすら涙を浮かべて思い込み、どんどん悪い方向へ向かっていくのである。
忙しい時に限ってつらまんギャグは炸裂する
この様に一度思いついてしまったギャグは、何度も言う。
もっともタチが悪いのは、そのバカ上司が暇だという点である。
そのため、部下が忙しいときに限って暇そうに近くに寄ってきては、
「いや、チンポジウムがさ」
などと言い出すので、聞き飽きた部下もついには頭に来て、
「チッ!」
と、明らかに悪意に満ち満ちた舌打ちを聞こえよがしにするが
『無反応から反応に変わった』
『脈あり』
と恐ろしいことを考えているので注意が必要である。
つまらんギャグは年を越す
で、今年の笑いはじめとして思いついたギャグだったが、受けるまで言うので年末まで同じことを言うハメに陥り、年末の忙しいときに
『今年の笑い収めは、私の渾身のギャグで』
と思い、
「来年の国際チンポジウムでは~」
などと言い出す。
一年間もの間言い続けているので、さすがにちょっと可哀想になった部下達も仕方が無く、
「・・・はは」
と付き合い程度で、苦笑いをする。
これがいかん。
これがバカ上司のハートに火をつけ、あくまで苦笑いにもかかわらず、
『爆笑』
『バカ受け』
と判断し、勢いづいて益々同じギャグを言うようになる。
死ぬまで言い続ける
数年立った後も
「いや、何年か前に俺が言ったんだけどさ~」
「俺がね、言ったんだけどさ~」
「会議の席でね、受けたギャグがあるんだよ」
「国際シンポジウムのことを、俺は何て言ったかわかる?」
「そう、この俺が何ていったか?」
などとクイズ形式を交えながら死ぬまで言うので注意が必要である。
いや、死んだあとも、末代まで伝えるべく、そもそも誰かがあとで読む用に書いている日記にも書いたりするので始末が悪い。
死んでも言う
最終的には自らの墓石に
〝チンポジウムの墓〟
などと堀り、それはそれで受けることになるので、笑いとは本当に難しいのである。
つりばんど 岡村
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