もくじ
時節柄、あちこちで非接触体温計で検温される機会が増えた。
アレで測定されているときは、どういう表情でいればいいのか分からないから苦手だ。
これは「こうこうこういう流れでやっていこう」という検温のマナーが決まっていないのが原因であるに違いない。
だから誰かにマナーを決めて欲しかったが、誰も決めてくれそうにないので勝手に決めることにした。
マナーを決めて、プロに判定してもらおう!
今回の企画は、自分たちで正しい検温のマナーを考えながら撮影。それをその道のプロに判定してもらうかたちをとることにした。
検温マナーの作りかた
手順①検温される側の心理は「卑屈」
まず、マナー作りの第一歩として検温される側の心理を考えよう。
検温される側は、なんとなく下を向くことが多い。それはピストルのような形の体温計を眉間のあたりに突き付けられているからである。
そのためだんだんと「俺みたいなもんがすいやせん」「お縄をちょうだいいたしやす」と卑屈になっていくのである。
手順②検温する側の心理は「居丈高」
検温する側は、検温される側が卑屈になるのと逆で、尊大な気持ちになっている。
というのも検温する側は、店なり施設なりに入場を許すか否かの決定権をもっており、立場は江戸時代の関所の番人に似ているからである。
そのうえピストル状のものを他人の額に向けているうちに、相手に対して「頭(ズ)が高いわ」などと心のなかでどんどん居丈高になっていくのである。
手順③ 悪い検温マナー例をあげていく
それでは①②を踏まえたうえで検温する側、される側の悪い例を列挙していこう。そしてそれらを省いていくことで正しいマナーを導き出すという寸法である。
卑屈な気持ちを払拭しようと腕を組むのは相手に威圧感を与えるのでNG。
アゴをしゃくり相手より大きく見せて威嚇するのはNG。
口からビールジョッキを迎えにいくようなあさましい行動なのでNG。
イベントなどでMCから向けられたマイクに手を添えてしまうような行動なのでNG。
正しいマナーが決まりました!
以上を踏まえまして、正しいマナーが導き出されました。
それではご覧ください。これが私どもの考えた正しい検温マナーです。
- 横柄に思われぬよう測る側はやや小走りに近寄る。
- そして相手よりやや低くかまえ、両手で体温計をいたわるように持つ。
- 相手に敵対心がないことをわからせるために双方アルカイックスマイルで。
- 測っているとき、測られているときは双方くびを傾ける。
- 検温後はディスプレイに軽く手をそえ、すばやく相手に見せる。
- 測られた側は検温してくれたことに敬意を表し軽く会釈する。
- 測った側は深々とおじきをして入店を見送る。
プロに判定してもらいたかったが断られてしまった!
いよいよ検温のマナーが決まったので、最後の判定大会である。
が、頼みの綱のマナー講師の方に取材依頼したがあっさり断られてしまった。
それでは、と同じくマナーのプロということで芸者さんや日本舞踊の先生、茶道の先生、いけばなの先生にオファーしたがすべて同じ結果だった。
最後の判定を誰も引き受けてくれない。でも絶対に誰かいるはずだ。
五千円札に描かれている新渡戸稲造は、著書「武士道」の中で礼儀とは結局のところ愛である、というようなことを書いている。
愛というのはつまり、相手のことを考え、時には厳しく指導してくれる人だ。
そのような人が私にもいたことを思い出した!
それは近所の自転車屋のおじさんだ!
いよいよ開催!検温マナー判定大会人情派
自転車屋のおじさんと聞いて驚かれた読者の方も、もしかしたらいるかもしれないが、このおじさんは口は悪いが人情に厚く、気さくでざっくばらんな好人物として地元ではちょっとした有名人である。いわば愛のプロだ。
愛のプロはマナーのプロ!この人に判定してもらおう!この人なら間違いない!読者諸氏もこの点については全く異論がない模様なのでこのまま突き進むことにする。
さっそく自転車を直してもらいながら、動画をご覧いただこうとするが
「人に直してもらうんなら、蜘蛛の巣くらいとってこい!」
と運び込んだ自転車の汚れについて一喝されてしまった。
検温マナー判定大会の開会の辞にぴったりな挨拶である。私の目に狂いはない。
「あのう、実は私たちはブログをやってまして、マナーについての動画を作りまして、どうかその評価をいただきたく…」と説明して動画をご覧いただこうとするが
「あ!?」
と、言うだけで観てくれようとしない。
絶対に動画をみさせる、こっちはあとがないんだと、〇×棒を差し出して手に持ってくれるように頼むが
「なんだそんなもん!しらねえよ!」
と取り付くしまもない。
「あの、おじさんは人情に厚くてマナーに詳しいはずなので…」と言うも
「俺はそんなことわからねえよ!」
とさえぎるように言って〇×棒さえ持ってくれようとしない。
あんまりしつこくしてもいけないので、一旦関係の無い世間話で盛り上がり、おじさんも笑顔を取り戻し自転車修理が終わったタイミングで
「ところで、〇か×かだけ、この棒で」と再びくいさがるが
「だーからわかんねって!」
「や、あの〇か×かだけ、それだけ…」
「そんなもん持って帰ってくれ!」
「いや、あの…」
「いいからそんなもん持って帰ってくれ!」
や、持って帰ってくれって別にこの〇×棒を置いていくつもりはなかったのだが、あまりの拒否りように不本意ではあるがここで検温マナー判定大会は幕を閉じたのである。
生まれて初めて塩をまかれるかと思った。
まとめ
結局今回の記事では我々が導き出した検温マナーについての良しあしは分からずじまいだった。
人一倍シャイなおじさんは口では「しらねえよ」「わからねえよ」と言いながら、心の中では我々に
「マナーっつうのはよ、ひとが判断するもんじゃねえんだよ」
と伝えたかったのかもしれない。
ということでやむを得ず、当記事では検温マナーの評価は読者諸氏それぞれにお任せすることにしたいがどうか?
どうかと言われても困るか?
つりばんど 岡村
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