【アホな教育係】 北風と太陽の誤認識とは?!

間違った前説

 

私の通っていた工業高校の文化祭に、聞いたことのない名前の落語家がきて、全校生徒で落語鑑賞をすることになった。

体育教師のひとりがステージに立ち、落語鑑賞にあたっての注意事項を説明しだした。

 

「おい、お前ら!」

 

「今から落語という古典芸能を演ってくださる!」

 

「笑え!」

 

と抜かし、おかげで誰も笑えなくなったことがある。

 

工業高校は生徒もバカだが、体育教師も似たり寄ったりなのである。

 

間違った指導

 

先述の体育教師まではいなかくとも、スポーツの指導などで

 

「身体が固くなってるぞ!」

 

「そんなに緊張してどうするんだ!」

 

「もっとリラックスしろっ!」

 

などと、とてもじゃないがリラックスできぬことを抜かす者がおる。

 

リラックスは、相手が心の中からするものであり、その人がリラックス出来るように、
落ち着かせる言葉をかけたり、話題を変えたりして、緊張をほぐすために物事を運んでいく必要があるのである。

にもかかわらず

 

「リラックスしろっ!」

 

などと言うのは言語道断、本末転倒なのである。

 

水泳親子

 

何年か前に市営のプールに通っていたのであるが、そこには45歳くらいの父親がコーチとなり、
5歳くらいの息子に対して水泳の猛特訓をしていた。

 

私が行くたびに遭遇するので、ほぼ毎日特訓していたと思われる。

 

コーチの父親は、プールサイドから

 

「ジュンちゃーん!(仮名)」

 

「ジュンちゃーん!」

 

と息子の名を、ずっと叫んでいるので、チビッ子の名前がジュンちゃんとわかる。

 

ジュンちゃんは、遊びたい盛りに本当に一生懸命がんばっているなと感心する思い。

 

「ジュンちゃーん!」

 

「ジュンちゃーん!」

 

「ジュンちゃーん!耳に腕をあてて!」

 

「はいっ電信柱!電信柱!」

 

などととても熱がこもっている。

言われたジュンちゃんも電信柱のように体をまっすぐにする。

 

話したことがないので想像でしかないが、私がプールで泳はじめて終わっても続けているので毎日一時間以上はやっていると思われる。

熱血親子とはこのことか。

ジュンちゃんが将来、有名な水泳選手になってくれたら嬉しいと思う。

 

 

なんでも、押しつけがましければ、全部台無し

 

ある日、ジュンちゃんが猛特訓に対し

 

「もうやだ」

 

とぐずりだし、泳ぐのをやめたり、適当に遊ぶように泳ぎ出した。

 

『毎日毎日、こんな練習漬けじゃ仕方あるまい』

 

と思っていたのだが、コーチの父親は急いでプールに飛び込みジュンちゃんに泳ぎ寄った。

 

適当に泳ぐジュンちゃんの肩を抱くと

 

「ジュンちゃーん!」

 

「ジュンちゃーん!」

 

「なんでマジメにやらないのっ!」

 

「あのね、楽しく練習するのと、いやいや練習するのでは結果がまるで違うんだよ!」

 

「ジュンちゃーん!」

 

「楽しく練習しなくちゃダメでしょ!!」

 

と言った。

 

いや、だったら楽しく練習できるように雰囲気を作ったり褒めたりすかしたり、持ち上げたりけなしたり
うまく物事を運ぶのもコーチのつとめだと思うのだが、相変わらずこのコーチは

 

「ジュンちゃーん!」

 

「なんでマジメにやらないのっ!」

 

「ジュンちゃーん!」

 

と言い続けているので、困ったものである。

 

それまでがまんしていたが

 

「だいたいジュンちゃんジュンちゃんうるせーよ」

 

と思ったのだった。

 

北風と太陽の例え話があるが、強制的な太陽は、北風以上に厄介なのである。

【新潟シティマラソン2017】リベンジレポート 4/4

35キロ到着

 

残り7キロ、あと一時間半。

 

「このままじゃ昨年同様失格する」

 

「今年は去年の忘れ物を取りに行かねばならん」

 

関門の時間も迫っているので、38.8キロ地点の関門までとにかく走ることにする。

 

これがしんどい。

しんどいが、とにかくタイムアウトだけは避けたい。

フルマラソン完走の経験が欲しいの気持だけで走る。

 

「体力も残ってないし、気力もないし」

 

「これって、アドレナリンだけで走ってるよなあ」

 

などと言いながら走り、関門締め切り15分前で最終関門を通過。

 

あとは歩いてでも完走できる!

 

と再び歩きはじめ、最後のエイドステーションにあったキュウリの浅漬けの涙が出そうになるほどの美味さをかみしめてたりしながら歩き続ける。

 

 

40キロを過ぎると応援の質が変わる

 

このあたりになると、沿道の応援の人たちも

 

「よくがんばったよくがんばった」

 

「この先はもう坂道はないから安心して!」

 

など応援もやや慈愛に満ち

 

「これまで酷いことしてごめん」

 

とでも言いたそうなセリフで、どことなくハードSMの様相を呈してくるので、私のMの血が騒ぎだしそうになる。

 

終盤に来ての猛烈な応援・・・

 

私たちのすぐ後ろを歩く女性ランナーが、私たちに

 

「間に合いますかね?」

 

と声をかけてくる。

 

「このペースならギリギリ大丈夫ですね」

 

「もう走りたくねえっす」

 

「ハハハ」

 

と言って、なんだかパヤパヤムードで、更に歩き続けると残り600メートルの所から手を叩きながら

 

「ほらほら、みんなあと少し!」

 

「マリオの恰好のおじいちゃんもホラ、走るよ!」

 

「ラストスパート!ラストスパート!!」

 

と威勢のいい女性の声がする。

 

『この期に及んでやかましい人だな』

 

と思っているとSが

 

「あれ、Qちゃんですよ!」

 

と言う。

 

「え!?」

 

と思って声の方を見ると、確かに高橋尚子さんである。

今大会二度目の遭遇!

ハイタッチをし

 

「二回もハイタッチしちゃったぜ」

 

と思っていると、高橋尚子さんが黄色いシャツを着たSに向かって

 

「ほら、黄色いお兄さん、一緒にゴールまで走るよ!」

 

という。

 

「ほら、青いお兄さんも!」

 

と青いシャツを着た私にも言って走り出す。

 

「ほら、そこの編み笠のお兄さんも!」

 

「黒いシャツのお姉さんも!あと300メートル!」

 

「みんな私から1メートル以上離れずに一緒にゴールするんだよ!」

 

と言ってどんどん仲間を増やしていく。

こんな経験二度とねーぞー!と思って走る。

 

「ほら写真なんか撮ってないで一緒に走るよ!あと200メートル!」

 

こんな風に金メダリストに言われてついていかない人はいない。

 

脚は痛いが、それはあとで考えることにして、とにかくみんなでついていく。

ハーメルンの笛吹きのごとくどんどん人が吸い寄せられる。

が、行先は地獄などではなく、FINISHと書かれたゴールである。

ゴールがどんどん近づいてくる。

 

「あら、みんな走れるんじゃない!」

 

「ほら、紫のお姉さんも一緒に走るよ!」

 

「はいみんなでゴールするぞー!?」

 

「おーーーーーーーー!!」

 

「はいみんな、横の人と手をつないでー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、ほんの一瞬世界が止まってゴールを切った。

 

 

※写真は、中央やや左の水色のTシャツのQちゃんに、背後から迫りくる、青いシャツでモヒカンで薄ら笑いを浮かべてゴールする直前の筆者。

この時私は何を考えていたか?

ゴールの感慨にふけっていたか?

いえいえ

 

『これ、ブログに書けるぜー!』

 

と思っていたである。

 

 

さて、その後、ゴールを共にしたものと高橋尚子さんとでハイタッチの応酬!

 

完走賞のバスタオルが肩にかけられる。

 

完走証を受け取る。

 

記録、6時間53分10秒。

総合順位6670位。

 

陸上部推薦のYはどうなったのか?

 

ああ、忘れていた。

スタート地点から走り去っていった元陸上部のYはどうなったか?

 

Yは、知らぬ間にトンネルの中で我々が追い越し、17キロ地点から徒歩。

結果、33キロの関門でタイムアウト。

二年連続の失格となり、タオルもおにぎりも貰えず、一人で数日落ち込むことになったのである。

 

家路

 

そして私は、帰り道に食糧などを買い込んで帰宅したのだが、お店の人が

 

「今日、走ったんですか?」

 

と声をかけてくれる。

 

「そうです」

 

と答えたが、どうも笑いを堪えるような顔をしている。

家に帰って鏡を見たら、日焼け止めを忘れてバンダナのあとがくっきりと残り、額がツートンカラーになっていたのである。

 

マラソンに必要なもの

 

来年からは、日焼け止めを忘れずに塗ろうと思う。

【新潟シティマラソン2017】リベンジレポート 3/4

だいたい人は18キロから歩き始める

 

先述のカップルの彼氏が言った通りにトンネルを抜けた18キロ地点から歩く者の姿が目立ち始める。

 

もう走っている人より歩いている人の方が多い気がする。

 

スポーティーな感じの女性とかも普通に歩いているので

 

『こんなスポーティーな人が歩いてるんなら、俺も歩こうかな』

 

などと頭によぎるが、やはり先述の彼氏の言葉を思い出し

 

『30キロまではガマン』

 

と走り続ける。

 

脚が痛くなり始めたので、持参していたエアーサロンパスを吹きかけようと一瞬足を停めたら

 

ガクガクガクガクッ

 

と震え始めたので、これはいかんとすぐに走り出し走りながらエアーサロンパスを吹き付けるという技を習得した。

 

「歩くと二度と走れない気がする」

 

「歩くくらいなら、例え歩くより遅くても走る」

 

を30キロまでの自分への戒めにする。

 

※写真では躍動感がなく、とても走っているようには見えないが、本人達はあくまで走っている。

 

お仕事いろいろ

 

地方局の女子アナも同行のカメラクルーを連れて走っている。

軽快に走っているが、途中で停まって生放送の中継に答えたりして、とても辛そうである。

 

『仕事とは言え、42キロも走るなんて本当にご苦労さまだよなあ』

 

と慈愛の気持で見ていたが、よく考えたら42キロを一万円支払って出ている俺の方が、何を好き好んで走ってるんだかと自虐的になってくる。

 

それでも、とにかく走る。

 

 

28キロ地点でボランティアのおじさんが大声で

 

「ほら、走ればいーんだよ!走れば!」

 

と応援ともなんともつかぬことを言っている。

 

そんなことは、全員わかってんだこの野郎、と思う。

 

ようやく30キロ

 

30キロ地点に到達。

 

結構、貯金も出来たはずだ、と、もう歩くことにする。

歩くと、今までそこまで感じなかった脚の痛みが猛烈に感じるようになる。

走ることで痛みを感じにくくなるものと思われる。

 

すると、そこへダースベーダーのコスプレの男が仮面を脱いで走ってきた。

沿道から

 

「仮面被んなきゃダメじゃん」

 

の声がする。

 

このクソ暑いのに、ひでえこといいやがる、と思う。

 

 

ゴールまで12キロ、残り時間2時間半。

 

途中で

 

「間に合うかな?」

 

「このペースだとギリギリアウト」

 

と話し合っている声がする。

 

貯金しているつもりだが、実はギリギリであるらしい。

 

しかしながら、再び走りだす元気がない。

とりあえず、休憩がてら、しばらく歩くことにする。

 

歩いていると、35キロ地点で当初一緒に走っていたSと合流した。

 

試しに1キロ歩いて時間を計ってみたら15分かかった。

 

キロ15分。残り12キロ×15分=180分。

三時間。

 

タイムアウトである。

 

「7時間あればスタートからゴールまで歩いても完走できるとか言ってたヤツ(俺だが)いたけど、やってみろってんだよなあ」

 

とSに話しかけると、すぐ横に居たおじさんが

 

「本当にそうだよねっ!」

 

と激しく同意してきたので驚くと同時におかしかった。

 

(つづく)

【新潟シティマラソン2017】リベンジレポート 2/4

いよいよスタート

 

沿道からは

 

「いってらっしゃーい!」

 

「がんばってー!」

 

の声。

 

これマラソンに出るとわかるんですが、とっても嬉しいんです。

大勢で普段通れない車道の真ん中を

 

ドッドッドッドッドッ!

 

と走っていくのは非日常の感覚であり、且つ、応援なんかもしてもらって気分も高まり

 

「一発やったろうかい!」

 

と、これから一揆のひとつでも起こしに行くような感覚にとらわれる。

 

「もしかすると幕末に起こった〝ええじゃないか〟って、こんな感じだったのかも?」

 

「落語の〝地獄八景亡者戯〟とかの天国へ向かう道はこういう風景かもしれない」

 

などといつも思う。

 

 

そろそろ1キロ

 

『もうそろそろ1キロ地点だな』

 

と思っているところへ後ろから大歓声。

 

『なんだ?』

 

と思って振り向けば、高橋尚子。

 

〝振り向けば〟

 

と言われてあなたは何と答える?

 

「〝振り向けば自転車屋〟でしょ?とんねるずのノリさんが歌った」

 

とか

 

「〝振り向けば横浜〟だよね!マルシアもそろそろ大鶴義丹、許したれよ」

 

などと答えるんでしょうが

(答えません)

私の場合は、振り向けば高橋尚子なのである。

ドヒャー!

このチャンスを逃すな!

 

と、慌てて手を出し、Qちゃんとハイタッチ成功!

 

①完走

②Qちゃんとハイタッチ

のふたつを目標に掲げた我が新潟シティマラソン2017は、スタート1キロ地点で早くも目標の半分を達成したのである。

 

沿道の応援はうれしい

 

そのままテンションあがって走り続ける。

 

市民ランナーはみんな派手な色の服装をしているし、コスプレで走っている人も大勢いるしで、応援してくれている人々のとくに小さい子供からすると、仮装行列でもみている感覚と思われ、私なんかでも手を振ると、とても喜んでくれる。

 

そのため

 

『沿道の応援になるべく答える』

 

と24時間テレビの萩本欽一氏が走ったときと同じ気持ちで、とくに小さい子には派手に手を振ってこたえておったが、5キロを過ぎたあたりから、実は子供達の歓声は私のすぐ後ろを走るダースベイダーのコスプレの人へのものであったことが判明し、それ以来、私は沿道の声援にはやや控えめに応えるようになったのである。

 

アドバイスをくれた救世主

 

いつの間にか一緒に走っていたSの姿は見えない。

どうやら先に行ったものと思われる。

 

私は一人で、昨年の反省から給水でガブ飲みしないように注意し、絶好調で14キロあたりである新潟みなとトンネルを通過。

トンネルを抜けたあたりでカップルが私と並走しており、その彼氏の方が彼女に

 

「このまま折り返して再びトンネルに入るけど、抜けると途端に辛くなる」

 

「20キロを過ぎると歩きたくなるけど30キロまでガマンしよう」

 

「30キロを過ぎればゴールも見えてきて気が楽になるから」

 

とアドバイスしている。

 

とても参考になったので、私は、その彼女になったつもりで

 

「わかった。私、あなたの言う通りにするわ」

 

と思うのであった。

 

(つづく)

【新潟シティマラソン2017】リベンジレポート 1/4

一年前は時間切れでした

 

2016年は、フルマラソン初挑戦にして34キロ地点でタイムアウトの憂き目に遭った私が、一年後に二度目のフルマラソンに出場することとなった。

 

2016年は5時間の時間制限であったが、2017年からは7時間に延長されたこともあり

 

「人間の歩くのは平均で時速6キロと聞いたことが有る」

 

「7時間×6キロ=42キロであり、スタートからゴールまで歩いても完走できるでしょ」

 

と思い、一年間まともな練習もせず、半年間、平均して週に二回ほど気まぐれに30分を走る程度の練習しかしなかった。

 

且つ一年間で体重が5キロも増えていたが

 

「最悪、歩き切ればよい!」

 

とタカをくくって本番当日を迎えたのである。

 

新潟シティマラソンのゲストはご存知のQちゃん

 

新潟シティマラソンは過去数年に渡ってゲストランナーが元シドニーオリンピック金メダリスト、Qちゃんこと、ご存知、高橋尚子さん。

以前にも書いたが、高橋尚子さんはそこらのゲストランナーとは違い、ただ走るだけではなく、まずはスタート地点で市民ランナーが全員出ていくまで見守る。

その後、自ら走りながら市民ランナーにハイタッチしていくスタイルで、2016年は

 

「80%のみなさんとハイタッチすることを目指す!」

 

と公言し、実際に推定90%の市民ランナーとハイタッチを交わしたが、私はスタート地点で

 

「みなさんがんばってくださーい!」

 

と励まされてから、タイムアウトになるまで高橋尚子さんとはお目にかかれずじまいで、のこりの10%になってしまい

 

 

「Qちゃ~~~~ん」

 

とルパン三世が

 

「不二子ちゃ~~~ん」

 

と言うときのイントネーションで悔しがったのであった。

 

さて、今年は、今年こそは、目標

 

①完走

 

②Qちゃんとハイタッチ

 

である。

 

大会当日

 

新潟駅前から大行列に並んでシャトルバスに乗り、スタート地点のビッグスワンというスタジアムへ移動。

 

※写真は、わかりにくいですが、駅のバスターミナルをうねうね曲がって階段を上ってさらに行列がつづくという、大行列。

 

2016年は市内の陸上競技場がスタート地点であり、ゴールも同じ。

そのため、着替えや荷物を預けるために併設の普通の体育館に入らねばならず、その体育館の出入りが、入るのも出ていくのも大行列、且つ牛歩戦術程度しか進まずイライラさせられた。

が、今年はスタート地点がとても大きな球場であり、荷物もスタジアム周辺にゼッケンごとに総勢27台に分けられた大型トラックに預ければ良いというストレスフリーな待ち時間となった。

(が、ゴールはまたあの小さい競技場なんで荷物の払い戻しには、かなりの行列に牛歩戦術的に並ばされたのであるが)

 

話をスタジアムに戻す。

着替えや準備も終わり、荷物も預け終え、開会式がスタート30分前の8:00から始まる。

 

※スタジアムの中に立つ経験がないので、それだけでテンションが上がる。

 

かの高橋尚子さんは

 

「今年は95%以上のみなさんとハイタッチします!」

 

と高らかに宣言し、地元のご当地アイドルのNegicco(ネギッコ)の挨拶、また市長だか県知事だかの挨拶が終わり、準備運動などして待つ。

 

 

私は職場の仲間と四人で参加したのだが、そのうちの一人のTは昨年完走経験があったのでD地点に並ぶ。

 

私とSは、申込時に自ら申請したフルマラソン想定タイムから、私は最後尾に近いHという地点からスタートさせられることとなった。

 

元陸上部の中距離ランナー、高校は陸上部推薦で入学したという弱冠21歳のYは私同様、昨年タイムアウトで失格になったのだが、申込時に虚偽の時間を書き、スタート地点がGとなった。

ところが、元陸上部のYは、スタート間際になってもG地点に並ぼうとせず私たちと同様、H地点からスタートするという。

 

『まあ勝手にすればいいわ』

 

と思っていたあたりで、スタートの号砲がなる。

 

花火がバンバン上がる。

 

スタジアムの大型モニターには最前列の選手たちが走り出している姿が映るが、こっちは全然動き出す気配がない。

 

五分ほど経ったところでようやくスタジアムを抜けてスタート地点まで移動すべく軽くジョギングで動き出した。

 

『スタート地点までは、ウォーミングアップ程度で軽くいこう』

 

と市民ランナー全員が思っているところへ、元陸上部のYが何を思ったのかスタート地点までジョギングしている人をちょこまかと追い抜いていき姿が見えなくなった。

 

「あいつはもうスタートしている気でいるのではないか?」

 

「急ぐんなら、はじめからG地点からスタートすりゃいいだろ」

 

と私とSとで呆れていたら、スタートラインに到達した。

 

スタートライン横に組まれたヤグラの上からNegicco(ネギッコ)がマイクで声援を送ってくれている。

 

スマホで写真をとる。スタート地点を抜けていよいよ走り出した。

 

(つづく)

【話が長い人との決別】 タイプ別 話が長い人の特徴とその対処法

困ってしまう、話がとことん長い人

 

話がいちいち長い者がおる。

必要な話が長いわけではなく、自慢話・愚痴など、聞きたくもない話を延々とクドクド話す。

 

貴重な休憩時間に

 

「ちょっと聞いてよ」

 

などと話しかけられ

 

「45分にわたる長い話を聞かされた」

 

というだけの話を60分かけて聞かされ休憩時間がまるまる無駄になったりするのである。

 

話が長いヤツとの会議はうんざり

 

こういう人が会議に参加するととてもやっかいである。

 

場を和ませる冗談のつもりか、余計な話を長ったらしく話して会議が進まない。

 

限られた時間の中で仕事をしておるのだが

〝なるべく手短に〟

という発想がないのである。

 

そうして散々みんなの時間を浪費し、仕事を遅れさせるが、自分は暇なので定時でさっさと帰っていく。

 

さあ、困った。

困ったので傾向と対策を考えました。

 

 

タイプ別 話が長い人の傾向

 

ひとつひとつ見ていきましょう

 

内容のない話を延々話すタイプ

 

おばさんに多い。

ただ話すことが目的で、そもそも伝えたい気持ちがない者たち。

 

愚痴や日常の出来事をただただ聞いて欲しいだけである。

こういう人は聞き手の相づちや、うなづきが大好物で、聞き手が相手をする限りなんでもいいので話つづける。

映画ユージュアル・サスぺクツのカイザー・ソゼの素質があるのかもしれない。
無いだろうけど。

 

 

自分でも何をはなしているかわからないタイプ

 

比較的若手に多い。

言ってることに自信がなく話の着地点が見つけられない者たち。

 

「僕は話が長いので~、長いのはよくないと思うので~、短くしたいと思うので~」

 

「き、清は、お、お前はお腹が空いたら、し、し、親切な人におむすびをもらって食べなさいといいましので~」

 

などと裸の大将じみた話し方となりどんどん話が長くなるのである。

 

 

話していて興奮してくるタイプ

 

反論できない目下の相手をどんどん追いつめる者たち。

立場の弱い者に対しては、面と向かって

 

「どうしてこういうミスをしたのか自分で考えて言ってみろ」

 

などと、とことん追いつめるヤバイ者たち。

 

逆に目上に対しては陰口で

 

「目上のAさんが起こした失敗で迷惑がかかった」

 

という話を

 

「Aさんったら、こんなミスしたくせに、全く反省してないんだよ」

 

などと初めは冷静に話しているが、そのうちにだんだん興奮し

 

「ちょっと!どう思ってるの!」

 

「あんた反省してるの!」

 

などと、聞き手がAさんにみえてくるらしく、ハッキリ言って聞き手は困ってしまうが、その困っている表情が嬉しく、普段Aさんに言えないことを言える喜びから更に興奮し口角泡を飛ばし相手を叱り続け話が長くなるでのある。

 

 

 

必要なことと、そうでないことの区別が出来ないタイプ

 

話は、全部はなさないと伝えられない。

 

「昨日行ったレストランの食事が美味しかった」

 

というだけの話を、関東ローム層のなりたちから話さないと説明できない者たち。

 

同じ話を繰り返す。

余計な細かい描写が多い。

聞き手も明らかに適当にあしらっているが、適当にあしらわれていることに気がつかないのだろうか?

 

 

他人の言った話を繰り返すタイプ

 

「さきほど、〇〇さんも言ったけど~」

 

と切り出し、〇〇さんと全く同じ話をする者たち。

 

〇〇さんが言ったので、いちいち繰り返す必要はないのだが、

 

「重ねて自分が言わねばならん」

 

と勘違いし

 

「自分の話を聞かせている」

「俺の話を聞けてうれしいだろーが」

 

という優越感満たしたいだけで話を長くするのである。

 

職場内の暇な人、暇なおっさんに多いタイプ。

 

職場内で暇なおっさんは、話をまとめる能力にも欠けるのでひとしきり訓示をたれ、

 

「以上!」

 

と言ったあと、

 

「あ、それから!」

 

と付け足したりする。

自分がバカであることをさらす結果になるのである。

 

 

 

対処法を考えました!

 

話が長い人は往々にして

 

「自分の話をきかせてやっている」

 

と勘違いしている。

ので、そこを逆手にとって

 

「あなたの話はききたくありませんよー」

 

となんとなく教えてあげましょう。

具体的には

 

・ちらちら時計を見る。

 

・相槌を減らす。

 

・あきらかにそっぽを向く。

 

などが有効。

 

『あなたの話には興味がありませんよ』

 

というのを相手にムカつかれない程度にあらわすと、さすがの話が長い人も察しがついて話すのをやめるはずだ。

 

どんな場面でも使える究極の対処法

 

「察しがわるいヤツだった場合はどうするの?」

 

「上司が話してるのに時計をちらちら見たりそっぽを向いたりなんてできない!」

 

という人には、究極の対処法、焦った顔をして

 

「すいません、お手洗い行かせてください!」

 

とトイレに駆け出す。

 

「お手洗い行ってきます!」

 

ではなく

 

「お手洗い行かせてください!」

 

というところがみそである。

 

『お前の話がいかに長く、こっちの便意を我慢させるほどの大迷惑をかけている』

 

ってことを分かりやすく気づかせることもできるので自己責任の範囲でお試しください。

【糖負荷試験を受けてみた!】糖尿病の恐れがあるヤツと呼ばれて(呼ばれてません)

健康診断の結果いろいろ

 

私の職場のWさんは痛風持ちなのだが、健康診断の結果に

 

『痛風になる恐れがあります』

 

と書かれており

 

「もう痛風なんだけどなあ」

 

と言った。

 

同じく職場の某は

 

『糖尿病です』

 

と、糖尿病の恐れがあるではなく、はっきりと

 

『糖尿病です』

 

と書かれたそうである。

そんなことってあるんだね。

 

私の場合

 

毎年、健康診断の結果は

 

『肝機能障害が見られます。精査を受けてください』

 

『糖尿病が疑われます。内科医で糖負荷試験をお勧めします』

 

『肥満が見られます。カロリーの取りすぎに注意してください』

 

『アルコール類の量を減らすことをお勧めします』

 

と書かれている。

 

「知るか」

 

と思って無視しておった。

 

が、一向に倒れる気配もないので毎年毎年、更に無視に無視を重ねて負った。

 

しかし、糖尿病なんて贅沢病だよ!

 

と思っていた私も年をとると糖尿病の疑いがあるだなんて。

 

が、たわむれに

 

「もしも糖尿病判定されたら、楽に痩せる薬なんかがもらえるかもしれない!」

 

と、よこしまな考えを持ち近所の内科へ行った。

 

内科に行った。初回

 

まずは血液検査

 

初回は血液を抜かれ、

 

「結果が出たらまた来てください」

 

と言われ、次回の予約をして終了。

注射に弱い人は、当ブログの注射の克服方法と言う記事を参照して乗り切っていただきたい。

 

二回目の来院

 

二回目は、前回の血液検査の結果を見ながら、糖負荷試験をするかどうかの相談をされる。

 

痩せる薬が貰えるかもしれないと思っているので、とにかくその試験とやらを受けると伝える。

 

「糖負荷試験は、二時間かかるので改めて来てください」

 

と更に次回の予約を入れて終了。

 

三度目の来院。糖負荷試験とは?

 

いよいよ三回目の来院で、糖負荷試験の日。

まず、左手で採血。

次に、超甘ったるいサイダーのような液体を300mlほど飲まされる。

 

で、30分~1時間おきに左右の腕から交互に採血。

 

合計6回採血。

 

で、きっつり二時間かかって終了。

次回予約を入れる。

 

 

四度目の来院。

 

糖負荷試験の結果を聞くも、なにがなにやらよくわからん。

 

「血圧の下がる薬を二週間分出しときますんで、飲みきったら再度来てください」

 

で終了。

 

「できたら、血圧計を購入して、二週間毎日つけてください」

 

と言われたので、仕方なくAmazonで上腕で測るタイプの血圧計(4000円弱)を購入。

毎日、朝晩二回、血圧を測るはめになった。

 

血圧計生活

 

 

軽い気持ちでいったのに、痩せる薬はもらえず、何回も通院して、且つ、毎日血圧も朝晩測らねばならず、

 

「まったくめんどくせー」

 

「例年通り無視してりゃよかったー」

 

と後悔するが、こうみえて長生きしたいタイプなので仕方がないとあきらめる。

 

で、測っていたが晩酌をはじめて、さんざん酔っぱらってから血圧を測り忘れたことを思い出し、

 

「やらないよりはやったほうがいい」

 

と酩酊状態で血圧を測ってみた。

 

血圧計が腕をぎゅ~っと締め付けてくる。

酔っているので

 

『負けてたまるか!』

 

などと思う。

 

『毎日毎日俺を締め付けやがって!』

 

と、血圧計に反抗して思い切り腕に力を入れる。

 

力を入れて

 

「Youはshock~!」

 

と、歌い北斗の拳のケンシロウ状態で力を入れた。

 

血圧計に思い切り逆らうとどうなるかわかりますか?

 

正解は、ただ腕にまく布のマジックテープがベリベリッとはがれて、エラーになるだけであり、
血圧計が壊れる恐れもあるので、飲酒後は血圧を測ってはいけない。

 

 

本屋で見つけた本

 

そんな折、本屋で

『筋トレが最強のソリューションである~マッチョ社長が教える究極の悩み解決法~』

 

 

 

という本が平積みされており、立ち読みしたらくだらないけど面白い。

何にでも影響を受けやすい私は、これを読んで二年前にやめてしまった禁酒と筋トレを再開しようと決意したのである。

 

腹が割れたら報告します。

【明るい宿無し生活】とりあえずの完結編

希望を捨てるな生きてる限り

 

希望があると人間は頑張れる。

スパ昭島で寝泊まりしながら、毎月貯金。

バイトをしながら空き時間にフリーペーパーの賃貸情報をみて勝手に間取りを想像したり、
家具の配置などを想像したり、職場の友人達に

 

「部屋を借りたら遊びに来てくれ」

 

などとわいわい騒ぎ、宿無しのくせして精神的に楽しんでいた。

 

健康ランド生活を二ヵ月続けたら、どーにかこーにか150,000円の金ができ、給料日に不動産屋に行くことにした。

 

楽しい不動産屋めぐり

 

とりあえず、なんとなく都心へ引っ越したい。

スパ昭島は好きだが、昭島は正直、私の求める東京ではない。

昭島市民よ、すまぬ。

 

しかし山手線圏内は家賃が高くて手が出ない。

 

とりあえず、どっちつかずの世田谷区、多摩地区と23区のはざま、千歳烏山に焦点を合わせる。

 

千歳烏山で入った不動産屋さんが悪かった。

あとで分かったが千歳烏山の不動産屋といえばピンとくる人もいると思うが、この店は、有名な電波系のイッっちゃってる方面の不動産屋さんであり、
当時、坊主頭であった私をみて店主のお爺さんが

 

「ほう、今時珍しい坊主頭・・・」

 

「君は〇〇〇か!」

 

などという

 

「違います」

 

と答えると

 

「なかなか見込みのある青年だ。ちょっと待っておれ」

 

と言って、奥から段ボール箱一杯に入ったアルバムやら新聞の切り抜きやらを持ってきて、
興味はないのだが、いろいろ日本のアンタッチャブルな部分を語って聞かされたりし、
最終的には、どういう訳だか、オウム真理教の新組織の入っているマンションを紹介され、内覧するか聞かれたが断って帰ってきた。

 

あのお爺さんは元気だろうか?

 

で、やや怖くなり

 

『やっぱり住み慣れた多摩地区だよなあ』

 

と、二十歳で上京した時と同じ街の、一番栄えているところの5.5畳のワンルームのユニットバスのマンションの、家賃が54,000円の、
建物は奇麗だが収納はへったくれもない、まさに足の踏み場もないほどの小さいマンションを、二度目の上京から八か月で、なんとかかんとか、どーにかこーにか、無事に借りることが出来たのである。

 

 

入居日

 

この物件はマンションの一階がトレーニングジムと大家さん一家の住居になっている変わった物件。

 

家具など買う金はなく、とりあえず無印良品で一番安いかけ布団だけ購入。

 

 

※当時、無印のかけ布団は、こういう袋に入っていました。

 

 

入居初日、着替えと洗面具の入った紙袋を持ち、無印のかけ布団を肩から引っさげてるという矢吹丈なみの荷物の少なさであったため、挨拶をした大家さんには、かなり怪しまれたことと思う。

 

 

部屋は閑散・雑然とし、敷き布団などは拾ってきたウレタンを使っておったし、借金もひどかったが、どうにかこうにか溺れかかりながらも陸地に辿り着くことが出来た。

『めでたしめでたし』

 

と言いたいところだったが、この入居から四年後、さきほどの大家さんから追い出され、再び宿無しとなるので人生は油断してはならないのだ。

 

 

【明るい宿無し生活】健康ランド編

精神崩壊寸前

 

それまで余裕で暮らしていたものの、駐車場の一件以来、毎日ビクビクビクビクして暮らすようになった。

 

精神的にもまいってきている。

 

事務所に潜伏しながらベッドで

 

『本格的に、別の住みかをさがさねばならんな』

 

と考えているが、考えて金ができるはずもなく

 

『やっべ~な~』

 

と思っていると

 

ガタンッ!!

 

と大きな音がした。

 

うすうす勘づいた社長が抜き打ちで来たのである。

 

 

『社長が来たんだ!!』

 

『・・・とりあえず土下座だ』

 

と思い、申し訳なさそな、情けなそうな笑顔を作って部屋を出ると社長はおらず、
換気扇フードにひっかけた洗濯ばさみがたくさんついた、あの干すヤツが洗濯物ごと床に落ちていたのであった。

 

 

「もーいや、こんな生活!」

 

 

※この洗濯ばさみのバケモノみたいなのはピンチハンガーというらしいです。

 

 

と、とにかく金はないが、自分は出ていくことにした。

 

 

知力・体力・時の運 三つ揃って健康ランド

 

 

※写真は私の心の故郷、スパ昭島(2010年惜しまれながら閉店。って、閉店したの知らんかった)。

 

原チャリでブラブラしておったら、いいことを思いついてしまった!

 

昭島市に当時、24時間営業の大型健康ランド、スパ昭島があった。

 

その健康ランドは入場料が大人、2,000円。

深夜0:00を過ぎると当時は、延長料金が1,000円取られた。

つまり一泊3,000円である。

一か月を30日としたら、90,000円であり、家賃よりずっと高い。

調べてみると、この健康ランドにはマンスリー会員という制度があり、当時は一か月10,000円を支払うと、入場料が無料になるのであった。

 

つまり、1,000円の30日分=30,000円、マンスリー会員費15,000円、しめて45,000円也。

これならなんとかなる。

これで、個室こそないものの、ゆっくり眠ることのできるレストルーム、映画鑑賞ルーム、TV見放題、
宴会場でカラオケ聞き放題(歌うと一曲200円)、ゲームセンターあり、図書館あり、食堂あり

バス・トイレ付、

〝付〟

なんてもんじゃない、大浴場!サウナ!滑り台つき流れる温泉!

トイレはもう数えきれないくらいある!

 

温泉とトイレ、レストルーム以外は男女別れていないので刑務所のようなむさくるしさもない。

 

健康ランドで仲間ができた!

 

 

何日もそこで暮らすと、顔見知りもでき、何人かと仲良くなった。

 

そいつらはみんな世界を旅するバックパッカーなんであった。

話してみると、この施設の隣には某宅配業者の集荷場があり、夜間は、その集荷場でバイトして
朝になるとこのスパ昭島で寝る。

夜また出ていく。

そうすると、夜間の延長料金を取られることなく、毎月のマンスリー会員費の15,000円だけで一か月生活できるのである。

そして金が貯まれば、再び海外に旅に出るのだそうだ。

 

なんと羨ましい。

 

海外に行くことがではない。

 

マンスリー会員費だけで生活できる点が羨ましい。

 

ということで、このスパ昭島、今はもう閉館したとのことだし、時効なんで書くが、
私は、ラミネートで簡単に作られたマンスリー会員証を偽造して、延長料金のみで生活し、一か月30,000円を支払い、
この施設を利用しておったのである。

 

私が金持ちになったあかつきには、恩返ししたかった施設だけに、閉店が悔やまれる。

(うそつけ)

 

当時、スパ昭島のテレビでクイズミリオネアという番組を観ながら、金の有難みのわからん連中め!と画面を睨みながらみていたことを思い出す。

 

(つづく)

【明るい宿無し生活】 盗み住み編

先輩のTさん

 

まあ、変な女と我慢して暮らす必要がなくなったのであるが、住む家がないのであれば話にならぬ。

 

とりあえず、ただで住めるところを探さねばならぬ。

当時は個室のネットカフェは普及しておらず、マンガ喫茶といえば本当に普通の喫茶店の壁一面に漫画本を満載した本棚があり、そこから本を各々持ってきて読むスタイルが主流であったため、そこで寝泊まりしようとは思わなかった。

 

そんな私の事情をくんでくれ、不憫に思ったバイトで知り合った先輩のTさんという人がいる。

Tさんはバイトを辞め、Tさんの父親が経営する会社に勤務している。

 

そのTさんが、会社の事務所として利用しているマンションが東京の外れのあきる野市にあり、その事務所には空き部屋があり、小さいが畳ベッドもある。

父親である社長には口が裂けても言えないが、事務所が閉まる20:00頃から、翌日事務所が開く7:30までの間と、事務所が開かない土日であれば、そこで寝泊まりさせてくれるという。

 

渡りに船とはこのことかと、資金が出来次第、すぐに出ていくという条件付きで、その提案に乗っからせていただき、新しい生活がスタートすることになった。

 

渡りに船

 

そのマンションは5階建ての2階にあり、2LDKであり、角部屋。205号室。

エレベーターがないのが痛いが贅沢はいっていられない。

(当たり前だ)

 

これまでの六畳ワンルームでの変な女との生活とは雲泥の差。

夜は近くのコンビニで買った弁当をリビングで大画面のテレビを見ながら食べる。

事務所なので、ガスは引かれておらず、シャワーからはお湯は出ないが秋なので冷水シャワーでも十分耐えられる。

 

 

廊下は静かに歩きましょう

 

これまたTさんからもらった原チャリで仕事から帰ると、マンションの駐輪場に原チャリを停め、エレベーターはないので、一か所ある階段を二階まで登り、つきあたりの角部屋までまっすぐに進む。

この廊下で人とすれ違うわけにはいかない。

 

同じフロアの住人から

 

「夜に誰か来てますよ」

 

などと言われてはこの生活もおしまいになるからである。

 

そのため、この廊下は抜き足差し足忍び足、且つ素早くダッシュで駆け抜け、素早くドアのカギを開け、素早く、且つ静かにドアを閉めねばならぬのである。

 

しかしながら、部屋に入ってしまえば楽勝。

 

『こんなに自由っていいもんかよ』

 

とシングルライフを満喫しておった。

 

盗み住み生活の難点

 

しかし、この生活の難点は隠れ場所のない廊下を素早く静かに走り抜ける以外に二点ある。

 

一点目は、会社が残業などで20:00を過ぎても事務所の明かりがともっており、部屋が空かないことがある点である。

そんな時は、自分の立場を忘れて

 

「はやく帰りやがれ!」

 

などと罰当たりなことを思っていたのである。

 

二点目は、マンションの部屋からこのマンションの駐車場が見渡せられるようになっているのだが、部屋にいるときに、その駐車場に自動車が入ってきたら、その自動車がこの部屋で借りている駐車場に停まるかどうかをみなければならない。

で、万が一、そこに停まったら社長なのでバレないように一目散に逃げなければならないという点である。

 

一応、はじめは自動車が入ってくるとビクビクしておったが、一向にこの部屋の駐車場に車がとまることもなく、

 

「わざわざ仕事を終え、翌日にまた出社なのに出てくることはあるまい」

 

とタカをくくっておった。

 

女の勘は恐ろしい

 

そんな生活が三か月ほどしたある日、社長夫人であるTさんの母親が、Tさんに

 

「なんだかここの所、誰もいないはずなのに、人の気配がする」

 

「出社したてで、誰もいないはずなのに、洗濯機の洗濯槽が濡れているのことがあった」

 

などと、持ち前の女の勘を作動させてきているらしい。

 

Tさんは

 

「そっ、そんなわけないよ~、きっ、気のせいだよ~」

 

などといって毎回はぐらかしてきたが、いよいよ危ないので、早く部屋を借りて出て行ってくれないかと言う。

 

金があれば出ていくのだが、無いのでどうにもならない。

 

かくれんぼで隠れているとき、ちびりそうなるよね?

 

その日も、金はないし、どうしようかなあとパンツ一丁でリビングで考えていると、マンションの駐車場に自動車が入ってきた音がする。

電気を消して、いつものようにそっと窓から事務所専用の駐車場に車が停まらないかを見る。

 

『停まるはずないのに、一応みるところが、俺が今一つ大物になれないところだな』

 

などと思っていると、なんとこの部屋の駐車場に自動車が停まったのだ。

 

「おいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!」

 

と言いながら、震える手で食べかけのコンビニ弁当の残りをコンビニ袋に入れる。

それを手に持ち、パンツ一丁のまま部屋を飛び出し、震えながらなかなかしまらないドアに鍵をかける。

 

バズンッ!

 

と、車のドアを閉める音がする。

 

社長より早く、階段を駆け降り、姿を隠さねばならない!

 

社長にみつかったら終わりだ!

 

社長と鉢合わせしたらどーする!?

 

いや、とにかく走れ!!

考えるな!走れ!走れ!走れ!

 

と秋も深まりコオロギがわんわん鳴いている音のするマンションの廊下を、パンイチでコンビニ袋もって駆け抜ける。

 

 

階段についたはいいが、社長は意外に足が速く、すぐ下から階段を上ってくる音がする。

 

「逃げられない!」

 

と、とっさに階段を上に上る。

超ションベンちびりそうである。

 

そ、そ、そうだ、な、な、何も駆け降りる必要はないんだ・・・

う、上に登ってやりすごせばいいのだ・・・

お、お、俺はなんて賢いんだ・・・

 

などと震えながら思っていたら、事務所の二階を過ぎて私のいる三階に登ってくる。

 

『バレたか??!!』

 

と思いながらも、そっと四階まで逃げるように登る。

 

するとその足音は遠ざかっていき、三階の一室に入って行ったのである。

 

事務所の駐車場が夜間に開いていると知った者が、そこに違法駐車したのだ。

 

足音は社長でもなんでもなかったのである。

 

『チクショー!』

 

と、パンツ一丁で階段の踊り場にうずくまりながら、声なき叫び声をあげたのである。

 

(つづく)