【新潟シティマラソン2017】リベンジレポート 4/4

35キロ到着

 

残り7キロ、あと一時間半。

 

「このままじゃ昨年同様失格する」

 

「今年は去年の忘れ物を取りに行かねばならん」

 

関門の時間も迫っているので、38.8キロ地点の関門までとにかく走ることにする。

 

これがしんどい。

しんどいが、とにかくタイムアウトだけは避けたい。

フルマラソン完走の経験が欲しいの気持だけで走る。

 

「体力も残ってないし、気力もないし」

 

「これって、アドレナリンだけで走ってるよなあ」

 

などと言いながら走り、関門締め切り15分前で最終関門を通過。

 

あとは歩いてでも完走できる!

 

と再び歩きはじめ、最後のエイドステーションにあったキュウリの浅漬けの涙が出そうになるほどの美味さをかみしめてたりしながら歩き続ける。

 

 

40キロを過ぎると応援の質が変わる

 

このあたりになると、沿道の応援の人たちも

 

「よくがんばったよくがんばった」

 

「この先はもう坂道はないから安心して!」

 

など応援もやや慈愛に満ち

 

「これまで酷いことしてごめん」

 

とでも言いたそうなセリフで、どことなくハードSMの様相を呈してくるので、私のMの血が騒ぎだしそうになる。

 

終盤に来ての猛烈な応援・・・

 

私たちのすぐ後ろを歩く女性ランナーが、私たちに

 

「間に合いますかね?」

 

と声をかけてくる。

 

「このペースならギリギリ大丈夫ですね」

 

「もう走りたくねえっす」

 

「ハハハ」

 

と言って、なんだかパヤパヤムードで、更に歩き続けると残り600メートルの所から手を叩きながら

 

「ほらほら、みんなあと少し!」

 

「マリオの恰好のおじいちゃんもホラ、走るよ!」

 

「ラストスパート!ラストスパート!!」

 

と威勢のいい女性の声がする。

 

『この期に及んでやかましい人だな』

 

と思っているとSが

 

「あれ、Qちゃんですよ!」

 

と言う。

 

「え!?」

 

と思って声の方を見ると、確かに高橋尚子さんである。

今大会二度目の遭遇!

ハイタッチをし

 

「二回もハイタッチしちゃったぜ」

 

と思っていると、高橋尚子さんが黄色いシャツを着たSに向かって

 

「ほら、黄色いお兄さん、一緒にゴールまで走るよ!」

 

という。

 

「ほら、青いお兄さんも!」

 

と青いシャツを着た私にも言って走り出す。

 

「ほら、そこの編み笠のお兄さんも!」

 

「黒いシャツのお姉さんも!あと300メートル!」

 

「みんな私から1メートル以上離れずに一緒にゴールするんだよ!」

 

と言ってどんどん仲間を増やしていく。

こんな経験二度とねーぞー!と思って走る。

 

「ほら写真なんか撮ってないで一緒に走るよ!あと200メートル!」

 

こんな風に金メダリストに言われてついていかない人はいない。

 

脚は痛いが、それはあとで考えることにして、とにかくみんなでついていく。

ハーメルンの笛吹きのごとくどんどん人が吸い寄せられる。

が、行先は地獄などではなく、FINISHと書かれたゴールである。

ゴールがどんどん近づいてくる。

 

「あら、みんな走れるんじゃない!」

 

「ほら、紫のお姉さんも一緒に走るよ!」

 

「はいみんなでゴールするぞー!?」

 

「おーーーーーーーー!!」

 

「はいみんな、横の人と手をつないでー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、ほんの一瞬世界が止まってゴールを切った。

 

 

※写真は、中央やや左の水色のTシャツのQちゃんに、背後から迫りくる、青いシャツでモヒカンで薄ら笑いを浮かべてゴールする直前の筆者。

この時私は何を考えていたか?

ゴールの感慨にふけっていたか?

いえいえ

 

『これ、ブログに書けるぜー!』

 

と思っていたである。

 

 

さて、その後、ゴールを共にしたものと高橋尚子さんとでハイタッチの応酬!

 

完走賞のバスタオルが肩にかけられる。

 

完走証を受け取る。

 

記録、6時間53分10秒。

総合順位6670位。

 

陸上部推薦のYはどうなったのか?

 

ああ、忘れていた。

スタート地点から走り去っていった元陸上部のYはどうなったか?

 

Yは、知らぬ間にトンネルの中で我々が追い越し、17キロ地点から徒歩。

結果、33キロの関門でタイムアウト。

二年連続の失格となり、タオルもおにぎりも貰えず、一人で数日落ち込むことになったのである。

 

家路

 

そして私は、帰り道に食糧などを買い込んで帰宅したのだが、お店の人が

 

「今日、走ったんですか?」

 

と声をかけてくれる。

 

「そうです」

 

と答えたが、どうも笑いを堪えるような顔をしている。

家に帰って鏡を見たら、日焼け止めを忘れてバンダナのあとがくっきりと残り、額がツートンカラーになっていたのである。

 

マラソンに必要なもの

 

来年からは、日焼け止めを忘れずに塗ろうと思う。

【新潟シティマラソン2017】リベンジレポート 3/4

だいたい人は18キロから歩き始める

 

先述のカップルの彼氏が言った通りにトンネルを抜けた18キロ地点から歩く者の姿が目立ち始める。

 

もう走っている人より歩いている人の方が多い気がする。

 

スポーティーな感じの女性とかも普通に歩いているので

 

『こんなスポーティーな人が歩いてるんなら、俺も歩こうかな』

 

などと頭によぎるが、やはり先述の彼氏の言葉を思い出し

 

『30キロまではガマン』

 

と走り続ける。

 

脚が痛くなり始めたので、持参していたエアーサロンパスを吹きかけようと一瞬足を停めたら

 

ガクガクガクガクッ

 

と震え始めたので、これはいかんとすぐに走り出し走りながらエアーサロンパスを吹き付けるという技を習得した。

 

「歩くと二度と走れない気がする」

 

「歩くくらいなら、例え歩くより遅くても走る」

 

を30キロまでの自分への戒めにする。

 

※写真では躍動感がなく、とても走っているようには見えないが、本人達はあくまで走っている。

 

お仕事いろいろ

 

地方局の女子アナも同行のカメラクルーを連れて走っている。

軽快に走っているが、途中で停まって生放送の中継に答えたりして、とても辛そうである。

 

『仕事とは言え、42キロも走るなんて本当にご苦労さまだよなあ』

 

と慈愛の気持で見ていたが、よく考えたら42キロを一万円支払って出ている俺の方が、何を好き好んで走ってるんだかと自虐的になってくる。

 

それでも、とにかく走る。

 

 

28キロ地点でボランティアのおじさんが大声で

 

「ほら、走ればいーんだよ!走れば!」

 

と応援ともなんともつかぬことを言っている。

 

そんなことは、全員わかってんだこの野郎、と思う。

 

ようやく30キロ

 

30キロ地点に到達。

 

結構、貯金も出来たはずだ、と、もう歩くことにする。

歩くと、今までそこまで感じなかった脚の痛みが猛烈に感じるようになる。

走ることで痛みを感じにくくなるものと思われる。

 

すると、そこへダースベーダーのコスプレの男が仮面を脱いで走ってきた。

沿道から

 

「仮面被んなきゃダメじゃん」

 

の声がする。

 

このクソ暑いのに、ひでえこといいやがる、と思う。

 

 

ゴールまで12キロ、残り時間2時間半。

 

途中で

 

「間に合うかな?」

 

「このペースだとギリギリアウト」

 

と話し合っている声がする。

 

貯金しているつもりだが、実はギリギリであるらしい。

 

しかしながら、再び走りだす元気がない。

とりあえず、休憩がてら、しばらく歩くことにする。

 

歩いていると、35キロ地点で当初一緒に走っていたSと合流した。

 

試しに1キロ歩いて時間を計ってみたら15分かかった。

 

キロ15分。残り12キロ×15分=180分。

三時間。

 

タイムアウトである。

 

「7時間あればスタートからゴールまで歩いても完走できるとか言ってたヤツ(俺だが)いたけど、やってみろってんだよなあ」

 

とSに話しかけると、すぐ横に居たおじさんが

 

「本当にそうだよねっ!」

 

と激しく同意してきたので驚くと同時におかしかった。

 

(つづく)

【新潟シティマラソン2017】リベンジレポート 2/4

いよいよスタート

 

沿道からは

 

「いってらっしゃーい!」

 

「がんばってー!」

 

の声。

 

これマラソンに出るとわかるんですが、とっても嬉しいんです。

大勢で普段通れない車道の真ん中を

 

ドッドッドッドッドッ!

 

と走っていくのは非日常の感覚であり、且つ、応援なんかもしてもらって気分も高まり

 

「一発やったろうかい!」

 

と、これから一揆のひとつでも起こしに行くような感覚にとらわれる。

 

「もしかすると幕末に起こった〝ええじゃないか〟って、こんな感じだったのかも?」

 

「落語の〝地獄八景亡者戯〟とかの天国へ向かう道はこういう風景かもしれない」

 

などといつも思う。

 

 

そろそろ1キロ

 

『もうそろそろ1キロ地点だな』

 

と思っているところへ後ろから大歓声。

 

『なんだ?』

 

と思って振り向けば、高橋尚子。

 

〝振り向けば〟

 

と言われてあなたは何と答える?

 

「〝振り向けば自転車屋〟でしょ?とんねるずのノリさんが歌った」

 

とか

 

「〝振り向けば横浜〟だよね!マルシアもそろそろ大鶴義丹、許したれよ」

 

などと答えるんでしょうが

(答えません)

私の場合は、振り向けば高橋尚子なのである。

ドヒャー!

このチャンスを逃すな!

 

と、慌てて手を出し、Qちゃんとハイタッチ成功!

 

①完走

②Qちゃんとハイタッチ

のふたつを目標に掲げた我が新潟シティマラソン2017は、スタート1キロ地点で早くも目標の半分を達成したのである。

 

沿道の応援はうれしい

 

そのままテンションあがって走り続ける。

 

市民ランナーはみんな派手な色の服装をしているし、コスプレで走っている人も大勢いるしで、応援してくれている人々のとくに小さい子供からすると、仮装行列でもみている感覚と思われ、私なんかでも手を振ると、とても喜んでくれる。

 

そのため

 

『沿道の応援になるべく答える』

 

と24時間テレビの萩本欽一氏が走ったときと同じ気持ちで、とくに小さい子には派手に手を振ってこたえておったが、5キロを過ぎたあたりから、実は子供達の歓声は私のすぐ後ろを走るダースベイダーのコスプレの人へのものであったことが判明し、それ以来、私は沿道の声援にはやや控えめに応えるようになったのである。

 

アドバイスをくれた救世主

 

いつの間にか一緒に走っていたSの姿は見えない。

どうやら先に行ったものと思われる。

 

私は一人で、昨年の反省から給水でガブ飲みしないように注意し、絶好調で14キロあたりである新潟みなとトンネルを通過。

トンネルを抜けたあたりでカップルが私と並走しており、その彼氏の方が彼女に

 

「このまま折り返して再びトンネルに入るけど、抜けると途端に辛くなる」

 

「20キロを過ぎると歩きたくなるけど30キロまでガマンしよう」

 

「30キロを過ぎればゴールも見えてきて気が楽になるから」

 

とアドバイスしている。

 

とても参考になったので、私は、その彼女になったつもりで

 

「わかった。私、あなたの言う通りにするわ」

 

と思うのであった。

 

(つづく)

【新潟シティマラソン2017】リベンジレポート 1/4

一年前は時間切れでした

 

2016年は、フルマラソン初挑戦にして34キロ地点でタイムアウトの憂き目に遭った私が、一年後に二度目のフルマラソンに出場することとなった。

 

2016年は5時間の時間制限であったが、2017年からは7時間に延長されたこともあり

 

「人間の歩くのは平均で時速6キロと聞いたことが有る」

 

「7時間×6キロ=42キロであり、スタートからゴールまで歩いても完走できるでしょ」

 

と思い、一年間まともな練習もせず、半年間、平均して週に二回ほど気まぐれに30分を走る程度の練習しかしなかった。

 

且つ一年間で体重が5キロも増えていたが

 

「最悪、歩き切ればよい!」

 

とタカをくくって本番当日を迎えたのである。

 

新潟シティマラソンのゲストはご存知のQちゃん

 

新潟シティマラソンは過去数年に渡ってゲストランナーが元シドニーオリンピック金メダリスト、Qちゃんこと、ご存知、高橋尚子さん。

以前にも書いたが、高橋尚子さんはそこらのゲストランナーとは違い、ただ走るだけではなく、まずはスタート地点で市民ランナーが全員出ていくまで見守る。

その後、自ら走りながら市民ランナーにハイタッチしていくスタイルで、2016年は

 

「80%のみなさんとハイタッチすることを目指す!」

 

と公言し、実際に推定90%の市民ランナーとハイタッチを交わしたが、私はスタート地点で

 

「みなさんがんばってくださーい!」

 

と励まされてから、タイムアウトになるまで高橋尚子さんとはお目にかかれずじまいで、のこりの10%になってしまい

 

 

「Qちゃ~~~~ん」

 

とルパン三世が

 

「不二子ちゃ~~~ん」

 

と言うときのイントネーションで悔しがったのであった。

 

さて、今年は、今年こそは、目標

 

①完走

 

②Qちゃんとハイタッチ

 

である。

 

大会当日

 

新潟駅前から大行列に並んでシャトルバスに乗り、スタート地点のビッグスワンというスタジアムへ移動。

 

※写真は、わかりにくいですが、駅のバスターミナルをうねうね曲がって階段を上ってさらに行列がつづくという、大行列。

 

2016年は市内の陸上競技場がスタート地点であり、ゴールも同じ。

そのため、着替えや荷物を預けるために併設の普通の体育館に入らねばならず、その体育館の出入りが、入るのも出ていくのも大行列、且つ牛歩戦術程度しか進まずイライラさせられた。

が、今年はスタート地点がとても大きな球場であり、荷物もスタジアム周辺にゼッケンごとに総勢27台に分けられた大型トラックに預ければ良いというストレスフリーな待ち時間となった。

(が、ゴールはまたあの小さい競技場なんで荷物の払い戻しには、かなりの行列に牛歩戦術的に並ばされたのであるが)

 

話をスタジアムに戻す。

着替えや準備も終わり、荷物も預け終え、開会式がスタート30分前の8:00から始まる。

 

※スタジアムの中に立つ経験がないので、それだけでテンションが上がる。

 

かの高橋尚子さんは

 

「今年は95%以上のみなさんとハイタッチします!」

 

と高らかに宣言し、地元のご当地アイドルのNegicco(ネギッコ)の挨拶、また市長だか県知事だかの挨拶が終わり、準備運動などして待つ。

 

 

私は職場の仲間と四人で参加したのだが、そのうちの一人のTは昨年完走経験があったのでD地点に並ぶ。

 

私とSは、申込時に自ら申請したフルマラソン想定タイムから、私は最後尾に近いHという地点からスタートさせられることとなった。

 

元陸上部の中距離ランナー、高校は陸上部推薦で入学したという弱冠21歳のYは私同様、昨年タイムアウトで失格になったのだが、申込時に虚偽の時間を書き、スタート地点がGとなった。

ところが、元陸上部のYは、スタート間際になってもG地点に並ぼうとせず私たちと同様、H地点からスタートするという。

 

『まあ勝手にすればいいわ』

 

と思っていたあたりで、スタートの号砲がなる。

 

花火がバンバン上がる。

 

スタジアムの大型モニターには最前列の選手たちが走り出している姿が映るが、こっちは全然動き出す気配がない。

 

五分ほど経ったところでようやくスタジアムを抜けてスタート地点まで移動すべく軽くジョギングで動き出した。

 

『スタート地点までは、ウォーミングアップ程度で軽くいこう』

 

と市民ランナー全員が思っているところへ、元陸上部のYが何を思ったのかスタート地点までジョギングしている人をちょこまかと追い抜いていき姿が見えなくなった。

 

「あいつはもうスタートしている気でいるのではないか?」

 

「急ぐんなら、はじめからG地点からスタートすりゃいいだろ」

 

と私とSとで呆れていたら、スタートラインに到達した。

 

スタートライン横に組まれたヤグラの上からNegicco(ネギッコ)がマイクで声援を送ってくれている。

 

スマホで写真をとる。スタート地点を抜けていよいよ走り出した。

 

(つづく)

【新潟シティマラソン2017に向けて】2016の回想④ 完結編

秋は赤いバスに乗って

 

 

選手収容のバスがゴールについたら閉会式もなんもかんも終わっており、高橋尚子選手は結局スタート地点で見かけただけであとは一切お目にかかれずじまいであった。

 

あとでテレビでみたら高橋尚子選手は

 

「市民ランナーの9割の人とハイタッチできたんじゃないですかね~」

 

と嬉しそうに語っていたので、私は1割のほうに入ったんだなと忸怩たる思いがした。

 

と、思わずブログを四回も使うほど長くなったが、つまり、私のフルマラソンデビューは、34キロ地点で時間切れという、はなはだ中途半端な結果に終わったのである。

 

完走できなかったものはどう考えるか?

 

さて、フルマラソンが完走できなかったものが考えるのは以下の二通りである。

 

ひとつは

 

「マラソンなんか二度と出るまい」

 

もうひとつは

 

「次こそは、完走!」

 

である。

 

後者の場合、必ず

 

「もっとちゃんと練習して」

 

「次回はもっと楽に走る」

 

というのが付け加わる。

 

私は後者である。

来年こそはきちんと練習する!と決意したのである。

 

ので、春にエントリーして、2017年10月9日(月・祝)に出ることになったのである。

 

リベンジするぞ!

 

では、去年からどのくらい練習したか?

 

まず、それから年内いっぱいは一切走らなかった。

年内どころか年が明けて4月の頭にハーフマラソンにでるために3月から走り始めた。

ハーフマラソンが終わると、その後はちんたらちんたら週に3日程度、30分走り、ラーメン二郎にハマったこともあり、休みのためにラーメン二郎の大盛を食べておったら、体重が7キロ増え去年74キロが今年81キロまで増加したのである。

俺が悪いんじゃない、ラーメン二郎が悪いのである。

 

やってきた新潟シティマラソン2017!

 

毎回、私はマラソンレースは勤務先の仲間と四人で出ている。

マラソンは、大会数日前に資料だとかが郵送で送られてくる。

 

仲間の一人で唯一去年5時間ギリギリで完走した者が

 

「岡村さん、ゼッケン届きました?」

 

「俺、今年、ゼッケンにDって書いてあったからスタート地点〝D〟ですよ」

 

という。

 

「そりゃ、去年ギリギリ完走じゃ、D地点だろーな」

 

「俺はまだ見てないけど、まあ俺もどーせD地点だろうから一緒に最後尾からスタートしようぜ」

 

と答えた。

 

念のため家に帰って改めてゼッケンをみる。

 

 

 

 

 

 

〝H〟と書いてある。

 

「いや、Hなんてスタート地点ないだろ」

 

「去年はDが最後尾だし」

 

 

「だいたいDからD・E・F・G・Hなんてそんなバカな」

 

と指を折って数えてみる。

 

改めて

 

「や、だからそんなバカな!」

 

と思う。

 

「今年はゼッケンのアルファベットとスタート位置は無関係なんだろう」

 

と思い、よくよく資料をみると、去年カラーだったスタート位置のページが白黒である。

 

えーと、Hの場所は・・・・っと

 

 

 

 

って、コラーッ!

トラックにも入りきってねーし!

なんだこのおまけ感!

どこまで人をコケにしたスタート地点なんだよ!

くっ、くそう。

 

今年は這ってでも完走してやるからな。

 

 

 

 

【新潟シティマラソン2017に向けて】2016の回想③ ポリバケツ編

30キロの壁

 

ギリギリで30キロの関門を抜けると、脚が棒のようになり、ずっとこむら返りのまま走っているかのような感覚になる。

って実際こむら返りしていたのかもしれない。

途中で大きなポリバケツに冷水が入れてあって、ヒシャクが突っ込んであるものを発見。

おじさんがそれを脚にかけてあげたりしている。

 

 

私は限界に近いので、そのポリバケツに靴を履いたまま脚ごと入らしてもらった。

 

『冷たくてなんて気持ちいいんだ』

 

『もうここから出たくない』

 

などと思う。

 

靴が水分を吸い、グショグショでズッシリと重たくなる。

 

レース前は、マラソンシューズについていろいろと調べ、最終的に

 

「やっぱりこっちの方が20グラム軽いからこっちだ!」

 

などと聞いた風なことを言っていた自分がバカに思える。

なんとかポリバケツから這い出して再び歩き始めると、次の34キロの関門が300メートルほど先に見えた。

 

「おーい!あと5分だぞー!」

 

などとマイクで叫んでいる。

300メートルを5分、普段なら楽勝なタイムだが今は高橋尚子選手級でないと無理なタイムに思える。

 

というか、高橋尚子さんどこに居るんだ?

 

『ハイタッチどころか、ぜんぜん会ってねーし』

 

と思う。

 

とにかく、ここまで来たら完走はしたい!

まずは、次の関門だ!300メートルダッシュ!

 

と思うが脚があがらない。

 

時間ばかりが過ぎる。

 

〝走れ、走れ〟と思いながらエッチラオッチラ走り、

 

「あと30メートルー!」

 

と沿道の人がいったところで、私の前を走る男性二人組がこちらを向いて両手で大きく×の字をつくる。

 

関門に白いロープがひかれ、〝タイムアウト〟を表す。

 

『そんなロープなくったって、突破できねーわー』

 

と思い、私はそのとき、

 

「ハッハッハッハ!」

 

と声を出して笑い、そのまま、映画プラトーンのような格好で、後ろに倒れたのである。

 

『終わった』

 

『終わってくれた』

 

と、仮に34キロ地点をクリアしても、ゴールまで実はあと8キロ以上もある距離をとても時間内にクリアできたとも思えず

 

『締め切ってくれてありがとう』

 

と心の底から思ったのである。

 

タイムアウトのあとは

 

タイムアウトになると、スタッフの誘導で道の脇に集められる。

10分ほどして、件の真っ赤な〝選手収容〟のバスがやってきた。

 

皆、バスの入り口で一枚づつ配られる自衛隊で使うような毛布を手にして乗り込んでいく。

 

〝護送〟

 

の文字が頭に浮かぶ。

 

ひたいを窓につけ、ただじっと外をみる。

 

バスの中では誰も口を聞こうとしない。

 

別に落ち込んでいる訳ではない。

 

精も根も疲れ果てて思考停止しているだけである。

 

(つづく)

【新潟シティマラソン2017に向けて】2016の回想② 給水編

フルマラソンビギナーが間違いがちなこと

 

新潟シティマラソン、2016年の天候は曇りのち豪雨、ときどき小雨、のち曇り という悪天候。

 

私をはじめマラソンビギナーは、給水ポイントをみると

 

「飲まねば損」

 

「飲んどかないと次いつ飲めるかわからん」

 

と、だいたい3~4キロごとに給水ポイントはあるにもかかわらず

 

〝給水に関する漠たる不安〟

 

が襲い、各給水ポイントで、ついついスポーツドリンクを飲み過ぎることになるのである。

 

 

マナー違反の人

 

雨に打たれて寒いせいもあり、猛烈な尿意を催すがコース途中にある簡易トイレはどこも行列。

 

そのため、コースを少し外れ、立小便をするメンズもチラホラ現れだす。

 

それを横目に我々市民ランナーは

 

「いくらなんでも社会人としてどうかしている」

 

「恥を知れ!」

 

「俺はああにはならんぞ!」

 

と大人としてのマナーの悪さに怒りつつも、羨ましさも交じりあった複雑な決意をするのである。

尿意の我慢の限界にきた辺りの18キロ地点で

 

「もう、タイムなんてどーでもいーわ!」

 

と思い、簡易トイレの行列に並ぶのであった。

 

すっきりしたところで再び走り出すも一度味わった休憩は、じわじわと怠け心を生み、折り返し点を超えたあたりから歩く者も多数いることだし

 

「俺もちょっとは歩くか」

 

と、そこから30キロまでの間は、ちょっと走っては歩き、ちょっと走っては歩き、って、ほとんど歩き。

 

エイドステーションという飲み物だけでなく食べ物のおいてあるポイントでは、置かれている飴や果物、味噌汁、お菓子などを片っ端から口にし、オレンジのあまりの上手さに泣きそうになりながら、さらに走る。

というより歩く。

 

水分とりすぎてお腹はチャポンチャポンし出す。

 

とにかく太ももから下の脚が痛い。

 

横を歩いている人が、その人の仲間に

 

「呼吸は大丈夫なんだが」

 

「脚が痛くて」

 

などと言っている。

 

そりゃ、歩いてるんだから呼吸は大丈夫だろうよ、と思う。

 

恐怖の選手収容バス

 

我々を追いかけてくるように、バスの全面に大きく

 

〝選手収容〟

 

と書かれた真っ赤なバスが対向車線から走ってくるのが見える。

沿道のおじさんが

 

「アレに乗らないように頑張れよー!」

 

と声援を送ってくれる。

 

どうやら、リタイヤするとあのバスに乗っけられてゴールまで連れていかれるらしい。

 

ランナーはレース中に何を喋っているか?

 

「というか制限時間5時間なんて、新潟シティマラソンは厳しすぎるんじゃないか?」

 

「コースの起伏が激しすぎるんじゃないか?」

 

「フードが充実してないんじやないか?」

 

「コースがくねくね曲がりすぎてないか?」

 

「お菓子がシケってたぞ」

 

「味噌汁が冷えてたぞ」

 

と、初めてフルマラソンに出てわかったことは、市民ランナーはコースの上で、苦しさの原因を自分の力量ではなく、運営側に対する愚痴に置き換えて延々話しているということである。

 

(つづく)

【新潟シティマラソン2017に向けて】2016の回想① 立志編 

二度目のフルマラソン

 

来たる10月9日月曜・祝日 午前8:30

 

元・重度のヘビースモーカーであり、中度のアルコール依存症であった〝キング・オブ・不健康〟と呼ばれていた私が昨年につづいて人生二回目のフルマラソンに出場する。

 

初フルマラソン時のスペック

 

昨年は本番からさかのぼること三か月から十分に走り込み、平均キロ6分で一時間で10キロの距離を走ることのできる肺と脚をつくり出場した。

LDSという長い距離を喋ることのできるゆっくりとしたペースでなら20キロは余裕で走ることもできるようになった。

 

とはいえ、スペック的には、身長167センチ、体重74キロと競馬場のパドックで見たなら、とても投票しない仕上がりではあったが。

 

いよいよフルマラソン

 

そして迎えた2016年大会。時間制限は5時間。一般的に市民マラソンは6~7時間なので厳しい設定である。

 

「だからなんだ!」

 

「目標サブフォー(四時間以内にゴール)!」

 

とFacebookで息巻いた。

 

ゲストランナーはQちゃん

 

新潟シティマラソンは毎回、ゲストランナーはかのシドニーオリンピックマラソン金メダリスト高橋尚子選手。

高橋選手はよくあるゲストランナーのように、普通に走って終わるわけではない。

オープニングセレモニーで挨拶したあと、市長だかが号砲を鳴らす横で、スタート地点を走っていく選手にマイクで声援を送る。

その上、10キロのファンランという短距離を走る市民ランナーと並走して自らも走る。

で、何度も何度もコースを行ったり来たりして市民ランナーとハイタッチしながら走る。

 

「一体何キロ走るんだ?」

 

という感じで大奮闘するのである。

さすがはオリンピック金メダリスト。
かつ地元が私と同じ東海三県の岐阜県。

岐阜県といえば愛知県民から言わせれば、ほとんど愛知県である。

もう愛知県出身ということで問題がないと思う。

 

さて、高橋選手は昨年(2016)

 

「今年は八割以上の市民ランナーのみなさんとハイタッチしたい!」

 

の目標を掲げて出場。

 

マラソンのスタートは、ゼッケンにかかれているアルファベットの位置からスタートさせられる。

私の場合、ゼッケンにDと書かれてあり、屈辱の最後尾のD地点からスタートとなる。

 

「Dから這い上がる」

 

「そして高橋尚子選手とハイタッチするぞ!」

 

と意気込んで最後尾のD地点からスタートした。 

 

※写真が2016年のスタート地点。私は屈辱の最後尾D地点。

関門って?

 

と、ところどころで

 

〝第〇関門〟

 

〝締め切り10:30〟

 

だとかの文字が見える。

 

『関門ってなんだ?』

 

『TBSテレビのオールスター感謝祭の第一ピリオドとかそのテの単なる区切りだろう』

 

程度に思っておったのだが、その関門を抜けるときに、スタッフのおじさんが

 

「おーい!あと何分で締め切るぞー!!」

 

などと叫んでいるのを聞いて、

 

『この関門って・・・』

 

『関門ごとに決められたタイムリミットまでに通過せねば即失格になるんじゃねーかー!』

 

と10キロほど走ったところでマラソンにそんなルールがあることを知り、極端に気が小さく、普通にできることも、カウントダウンなどされると途端にプレッシャーを感じ手につかなくなる性格であり、急にギクシャクし右手と右足を同時に出すように走るハメになったのである。

 

みなさんもマラソンに出場される際は、制限時間だけではなく、決められた関門ごとにも時間制限があることので注意いただきたい。

まあ、ちゃんと送られてきた資料を読めば書いてあるのだが。

 

(つづく)

気を付けよう! ジョガーに対するマナー

走っているときに迷惑なひとがいる。

あなたが走っている人を見かけたら以下のことをしないようにしましょう。

 

歩行喫煙の人

 

今時いるのか?と思うが結構いる。

私が走っているのは、新潟の信濃川沿いの家族連れでお散歩とか、
ジョギングコースのようになっているところなのだが、そこで平気で歩行喫煙しているのである。

こういう人が道端に唾を吐いたり、立小便をしたりしてるんだろうと思われる。

汗をかいている顔に、タバコの煙がへばりついてくるのでしんそこ臭く、苦しい。

 

 

コーチな人

 

マラソンレースに出ているとたいがいこういう人が寄ってくる。

 

「だいたいキロ何分で走ってるの?」

「このペースで行けば2時間で折り返せるぞ!」

 

などとロードワーク中にボクサーを自転車に乗りながら指導するコーチのように

「ファイッ!ファイッ!」

などと言いながらついてくる人。

気持ちはうれしいが、こっちは走るのが苦しくて必死なタイプなんでうるさい。

 

 

変な挨拶の人

 

走っていると

「おはよーございまーす!」

とか

「オッス!」

のような手つきをしてこられる人がいるが、こういう挨拶の人はすがすがしいし、励みにもなって嬉しい。

が、前方から私と対向に走ってきて
急にシャドーボクシングを初めて、私に向かって

 

ビシッ!

 

 

とされたことがあるが、ああいうのは困る。

 

 

質問してくる人

 

ある日、走っていると、ギターさえ持っていないが怪傑ズバットの変身前のような恰好をした男が、
前方でカップルに何か話しかけていた。

 

 

やべえヤツがいるなあと、

そこを私が通り過ぎようとしたときにそいつが真横から急に大声を出して

 

「いつも何キロくらい走るんですかー?!」

 

と質問してきた。

何キロ走るか決めていないので、答えに窮してしまい、かといって無視するのもどうかと思ったので、かなり離れたところから、ぜえぜえ言いながら

「いろいろー」

と答えたが聞こえたかどうかわからない。

 

だいたい走っている最中に、真横から急に質問されて答えることができる人がいるだろうか?

 

「地球の形はー?」

とかくらい決まりきった質問なら

「まるー」

とか答えられるだろうけど

「今夜、何食べる予定ですかー?」

とか、

「幸せってなんですかー?」

とか言われても急には答えられない。

 

だいたい俺が何キロ走るかなんてさして興味もないだろうし、ただただコミュニケーションをとりたいだけの
この怪傑ズバット野郎である。

 

 

もしもあなたが、どうしてもランニング中の人に聞きたいことがあったら、かなり前方から声をかけてあげてください。

 

まとめ

 

走っている人に対しては、なるべく放っておいてあげてください。