ようやく居酒屋へ
仕事が終わり、二人して店へ向かい、時間よりも15分ほど早く店の前についた。
件の後輩は相変わらずウヒョついておる。
ウヒョつくどころか、ソワソワし出して
「アニキ!店入る前に、どっかで一杯ひっかけていきませんか?」
などと言い出した。
「一杯飲むって、今から一杯飲むんだよ?」
「いや、だからその前にビールだけ一杯!」
「まあ、別にいいけど、もう相手の人たちくるんじゃない?」
と言ったが、耳に入っていないらしく、一人でズンズン歩いていき、よくあるTVが点いている小さな居酒屋に入っていく。
ドカッと席に座ると
「生二つ!」
などと勝手に、且つ横柄に言い、出てきたおしぼりで顔をゴシゴシと拭く。
おしぼりを首に回して、うなじから耳の中まで、ゴッシゴシゴッシゴシと拭く。
この男にランニングシャツがどうこう言われたことが腹立たしい。
顔を拭き終えると、出てきたビールを一気に飲み、叩きつけるようにジョッキを置くと
「よしっ!」
と言い
「ゲフッ」
などと漏らしてレシートを掴んで立ち上がり、出ていこうとする。
私はまだ一口も口をつけていなかったので、慌ててビールを飲み、後輩を追いかけるようにしてレジへ行く。
で、きっちり割り勘。
チャカつき続ける人
「よく、一杯だけのもうなんていって誘われることあるけど、本当にこんなに一杯だけなんて、お店の人も驚いていたろうね」
と話しかけるが、こちらの話は全く耳に入っておらず、上の空で、ジャケットやズボンのポケットというポケットを叩いたり、かき回したりしながら
「えーと、タバコを買っとかなくちゃいかんな」
とつぶやき、タバコ屋を探してキョロキョロしている。
タバコ屋は彼のすぐ背後に有ったのでその旨を教えると
「ああああ」
などと言いながら
〝そんなことは言われなくても、そもそもわかってますよ〟
というような表情をし、自動ドアにぶつかりながらタバコ屋へ入っていき、タバコを買うと、転げ出るように、再び自動ドアにぶつかりながら出てきた。
で、タバコに火をつけて深く吸うと、待っていた私に対し、
「アニキなんか緊張してるみたいですね!」
「って、おめえだよ!!!」
と一喝して、ようやく待ち合わせの居酒屋に入っていったのである。
(つづく)
つりばんど 岡村
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