【花輪和一著】刑務所の中について考える

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憧れの集団生活

 

一人での生活が好きなのだが、時折、極端に大人数で集団生活してみたくなる。

年のせいかもしれない。

居酒屋などで行われる同窓会などには行く気がしないが、もしもその同窓会が、野外学習で行った少年自然の家だとか、修学旅行で行った本郷の木造旅館などで行われるのであれば是非参加したいと思う。

 

 

「さらにそれが、泊まりであったりしたらどんなに楽しいだろうか?」

 

「そんな生活なら、もう一か月くらい生活してみたい!」

 

と思うのは私だけだろうか?

 

 

だが、そんな生活は実現するはずもなく、まあせいぜい物好きが4~5人でそういう施設で泊まる程度だろう。

 

4~5人では意味がない。

 

もっともっと大勢でないと意味がない。

 

で、私と同じ極端に大勢の集団生活を好む者は、自ら集落を作り、上九一色村に住んだりだとか、元女優の高樹沙耶みたいになってしまうのかもしれない。

 

合法的な集団生活は?

 

いや、そんな非合法のものでは困る。

 

合法的に集団で生活できないか?

 

そうだ、刑務所なら無料でそんな生活ができるぞ?

 

と思う。

 

罪を犯さず、嫌になったら出ていけるような刑務所体験のできるものはないだろうか?

と〝刑務所体験〟の可否を調べてみるが、どうやら日本では不可能らしい。

 

くそう。

 

と、叶わぬ無罪での刑務所願望が募り、その欲求を満たすために好んで刑務所が舞台の作品を観るようになった。

 

花輪和一著、『刑務所の中』

 

 

そんな中、偶然、古本市で出会ったのが漫画家の花輪和一氏の実体験をもとにした2000年発刊のエッセイ漫画作品、『刑務所の中』である。

 

花輪氏は、1947年生まれ。改造銃などの所持していたことにより、銃砲刀剣類不法所持と火薬類取締法違反で1995年から三年間実際に刑務所に服役。

その実体験を、タッチは劇画調で重々しいが、突き抜けた明るさと、ひょうひょうとしたギャグ満載で描かれており、読んでいて刑務所の中の世界にグイグイ引き込まれ、私の無罪で刑務所体験願望を満たしてくれるのであった。

 

どうやって書いたのか?

 

 

施設内部の様子も事細かく描かれており、よっぽどメモなどしていたのだろうと思っていた。

 

が、私は知り合いに数人元受刑者がおるのだが、彼らにその旨を話すと

 

「刑務所の様子をメモなどすることは許されない」

 

「隠してメモ出来たとしても、それを持ってシャバには戻れない」

 

とのことで、調べてみるとこの作品はほとんどが作者の記憶で描かれているとのことでその記憶力にも驚かされる。

 

で、刑務所内部では何が行われているかというと、ほとんどが食べ物の話である模様。

 

受刑者同士、考えているのは食べ物のことばっかりみたいなんである。

 

元受刑者に話を聞いてみる

 

また元受刑者の知人に聞けば、

 

「まったくその通り」

「食べ物の話ばっかりですよ!」

 

という。

彼が塀の中でつけていたノートを見せてもらったのだが、そこにはのっけから〝ステーキ丼がなんちゃら〟とか、〝ケーキがどうちゃら〟とか出所したら食べたいものがズラーーーーーーーッツと羅列されており度肝を抜かされた。

で、遠い目をしながら

「あの作品は、本当にリアルな刑務所が描かれていますよね」

とも言う。

 

「さすが、元受刑者。出所後も、こういう刑務所モノをチェックしてるねえ~」

 

と言うと

 

「いえ、ムショの中で借りて読んだんです」

 

とのこと。

 

こういう刑務所生活を揶揄する作品が刑務所の中にあるなんて、日本の刑務所は固いんだが、柔らかいんだかよくわからなくなるのであった。

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つりばんど 岡村

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。 詳細プロフィールはこちら

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