【日韓ワールドカップの思い出】ボロい原付とフーリガン②

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公園の中のヤンキー集団

 

とにかく早く通り過ぎたいが、残念ながらスピードの出ないボロ原チャである。

不良集団の真ん中を徐行に毛の生えた程度のスピードで通り過ぎる。

 

『私に悪意はございませんよ』

 

『近道するだけだから放っといてね』

 

『敵じゃないよー』

 

と誰とも決して視線を合わさぬように意識する。

 

『いやあ、若いっていいなあ』

 

『若者、大いに集うべし!』

 

『君たちみたいな者たちが日本の将来を支えていくことになるんだよー』

 

の感情を込めてニコニコの笑顔をつくり通りすぎようとしたとたん

 

 

「なんだてめえ!」

 

「やんのかコラーッ!」

 

など一斉に怒声を浴びせられる。

 

『ハハハ』

 

『元気があっていいなあ』

 

『日本の未来は君たちにかかっておるのだよ』

 

『日本の未来は、世界がうらやむイェイイェイイェイイェイ』

 

と更に作り笑いを振りまくも全く通用せず、集団のうちの三人が

 

「なんなんだテメエ!」

 

となどと口々に頭の悪そうなことを口走り、私の両肩をつかんで揺さぶる。

 

『そんなに揺すったら』

 

『おでんがこぼれるだろうが!』

 

とイラッとする。

 

多勢に無勢

 

が、闘うわけにはいかない。

学生時代から、ひとり相手のケンカにも勝ったことがないのに、相手は3名、総勢40名程度である。

 

こういう時の私の常套手段、それは

 

〝威嚇、のち撤退〟

 

である。

 

〝猫だましからの逃亡〟

 

と言い換えてもいい。

 

とにかく怒声を浴びせて相手をひるませ、その隙に逃げるのである。

しかしこんな大勢相手にうまう行くか?

 

「痛ぇなチクショー!」

 

「やってやるから手ぇ離せ!」

 

と鼓膜も破れよと言わんばかりの大声をだし

 

「バイク停めるから離れろ!」

 

とバイクを降りながら更に大声を出すと、持前の低能らしさを発揮して、うれしいことに離れてくれる。

 

シャドーボクシングの真似事をしている者もいる。

 

すかさず私は

 

『あとは逃げるだけ』

 

と再びバイクにまたがり

 

『ボロバイクよ!今こそお前の最大限の力を出せ!』

 

と念じながらアクセルグリップを力一杯ひねると

 

 

プッスンプッスンプッスン・・・・・

 

とエンスト。

 

『あちゃー』

 

と、そのまま原チャリを引いて

 

「今こそ、私の最大限の力を出す!」

 

と猛然と公園の外までダッシュ。

 

なぜか連中もそれ以上追いかけても来なかった。

 

哀れだったからかもしれない。

 

奴らの正体

 

そのままマンションに帰り、日本代表の試合を観て、

 

「あいつらが、世に言うフーリガンという奴らなんだな」

 

「フーリガンはやっぱり恐ろしいな」

 

とガクガク震えながら思ったのである。

 

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つりばんど 岡村

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。 詳細プロフィールはこちら

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